国道260号紀勢南島トンネル旧道(棚橋隧道区間)前編 


 国道260号は三重県志摩市と三重県三重県紀北町を結ぶ路線であるが、途中には海上区間を含んでいる。

 南伊勢町と紀北町の境に位置する棚橋隧道は前後の区間を含め長く難所とされてきたが、2002年に紀勢南島トンネル(1550m)が開通。

 その後東側の区間のバイパスも開通し、難所は解消されている。

 旧道区間は一応最低限の整備はされているものの旧道化から10年近くが経ち、少々荒れた状態となっているようだ。

 新桑竈


2011年3月6日

 三重県南伊勢町の新桑竈(さらくわがま)という難読地名の地区の先から、目指す棚橋隧道への旧道は分岐する。

 ちなみに「竈」というのはかつて製塩が行われていたことに由来しているという。
 
 また標識にもあるが、すぐ近くには棚橋竈という地名もあり、かつてはこの辺りに9つの「竈」があったという。
 
 早速旧道への分岐点へ到達。

 カラーコーン一個だけと、それ程厳重な封鎖でもないが、この先やいかに。

 
 すぐ先に再び通行止の看板。

 1km先災害復旧工事の為通行止 とある。

 この通行止めとは関係ないが、奥の看板には この先幅員の狭小区間があり、12m以上の車輌は通行できません。 

 と書かれている。しかしすでにこの地点でつい最近まで国道として供されていたとは思えない狭さである。

 100m程進んで、上を見上げるとこの風景。

 方角的に峠方面とは思えない場所に築かれた鉄骨の骨組み。

 手前の法面も補強されているが、旧道の補修工事だとはちょっと思えない。

 謎の工事

 やはりこの謎の工事は旧道補修ではないようで、峠方面とは反対に分岐して先を目指している。

 一応通行止め扱いなようで、A型バリケードが3つ置かれているが、よくある「安全+第一」でもなく「三重県」でもなく「国土交通省」と書かれており珍しい。

 ちょっと登った先には、街中にあるようなガードパイプが行く手をふさいでいた。

 ちなみにこのガードパイプは足元がしっかり固定され、容易に開閉できるようには見えない。

 さらに進むと先ほど下から見上げた部分に出る。

 鉄骨の骨組みは道を広げる為の桟橋のようだが、まだ未完成のようだ。

 ちなみにこの先は広々とした更地が100m程続いたあと、すっぱりと道が無くなっている。

 さらに道が延長されそうな雰囲気も無く、ここに何か建設されるのであろうか。
(マウスオーバーで先へ)
  
 分岐点へ戻り、今度は旧道方面へ。

 ここにも通行止の標識があるが、理由は示されていない。
 
 「謎の工事」側だけ法面が補強されているのがお分かりいただけるであろうか。


 崩落地点 

 1.5車線程の旧道を1km程進むと、入口の予告通り工事現場が現れる。

 大きなユンボが道を塞いでいるが、幸い今日は日曜日であり…。

 ユンボの先は半分ほど道が落ちたようで、復旧工事が進行中である。

 入口の看板には通行止め期間が3月1日〜3月25日までとあるが本当にそれまでに復旧できるのであろうか(本日3月6日)
 崩落個所の反対へ。

 麓側の看板も倒れていたが、こちら側も同様に倒れている。

 今日はそれ程風も強く無いが、人為的なもの?
 崩落地点の先は、工事車両も入らず道は少々荒れ気味である。

 ガードレールもない路肩と、荒々しい法面は舗装林道ならば上等といった感じだが、たしかにここは最近まで結構な通行量のある国道であった。
 いくつかの九十九折れを登り標高を上げていくと、先ほどの崩落現場を谷を挟んで見下ろす場所に出る。

 先ほどは下ばかりに目が行っていたが、実際にはかなり上部からの大規模な崩落だったようだ。

 北山隧道 そして

 現状ここは国道指定を外れている筈だが、三重県内の国道で良く見るこのシールタイプの「おにぎり」はそのまま残されている。

 ここ以外の旧道でも同様な例があり、どうにも剥がれにくいようだ。
 旧道は屈曲を重ねながら峠を目指す。

 海から5km程しか離れていないこの場所だが、そんなことを感じさせない山深い雰囲気である。

 だんだんと稜線が近付いており、隧道はもうまもなくか。
  現在は南伊勢町となっている南島町と紀北町の境に到達。

 何とも趣きのある町名だけに合併は残念である。

 下の看板は「3km先災害復旧工事の為通行止」「この先迂回路ありません」とあり、先ほどの崩落地点を示している。

 どうやら紀伊長島方面からはここまで来ることが出来るようだ。
  
 そして、すぐ先が目指す棚橋隧道。

 大正3年竣工 延長122mという古株である。

 よく「鍵穴のような」と称されるこの隧道だが、自分は「ムンクの叫び」をイメージした。

 隧道のサイズと比較して大きく見える「頭上注意」だが、注意するべきは高さより幅なのではとツッコミを入れたくなる所である。


 後編へ