日本縦断東日本編【平成15年8月21日】北秩父別駅〈北海道雨竜郡秩父別町〉⇒ユースホステルそばの花〈雨竜郡幌加内町〉

野宿の醍醐味は、何と言っても無事に朝を迎えた時の爽快感だ、普段の生活ではこんなにも朝日が美しいと思えることはまずない。恐らく電気もガスもない昔の人もそうだったのだろう。…なんてことを思いながら、今日は北秩父別駅で無事朝を迎えた。

 
 夜が明けると、昨日は闇に包まれ良くわからなかった事がいろいろと発見できた。

 まず、こんな水田の中なのに時々大型車の通る音が駅の後方から聞こえてきて不思議だったが、建設途中で暫定無料開放中の「深川留萌自動車道」が駅の後方を通っているのだった。

 しかし、こんな早朝とはいえほとんど車が通っていなくてもし留萌まで全線開通したとしても赤字必至だろう。

 そんなことを考えながら出発の準備をしていると列車の時間でもないのに踏切の警報音が鳴り響き、キハ54単行の回送列車が猛スピードで通過。小さな待合小屋は、ほとんど地震のような揺れかたでかなり驚いた。

 始発列車が来るまでにはまだ当分時間があるが533、今日の目的地の幌加内町(ほろかない)朱鞠内(しゅまりない)へ向けて走り出す。

 水田の中の道を進み、かつては昨日沿線を走った札沼線の終点だった石狩沼田駅550、到着。

 石狩沼田駅は留萌本線の主要駅で数少ない有人駅だが交換設備は無くなり、片面ホームになっていて列車本数の減少を実感した。

 早朝から夏祭りの準備をする地元のおじさんを見ながら、駅前のベンチで買ってあった「カロリーバランス」(ダイソーで購入、韓国製、まあまあうまい)を食べて朝食にした。

 石狩沼田駅を出ると、いよいよ旧深名線沿いのルートを走る国道274号に出る。

 この道は国道とはいってもとても交通量が少なく、たまに近くの農家の軽トラックが通る程度で自転車にとっては走りやすい道だ。



 鷹泊の集落を過ぎると、幌加内峠(標高約200m)への登りにかかる。この峠はなかなかきつく、熊でも出そうな雰囲気が怖かったが追い風もあってなんとか押さずに越え、北海道有数の面積を誇る幌加内町に入る。

 
 しかし、この峠も下を貫くトンネルの工事が進んでいて数年後には旧道化する運命なそうだ。

 下に線路は既にない「袴線橋」を何度か通り峠を下ると、そば畑の中を走るようになった。今の時期はそばの花が満開で、一面のそば畑は白い絨毯のようだ。

 

 豪雪と酷寒で知られる幌加内は思っていたより大きな街だったが朝早いこともあってか街を歩いている人はほとんどいない。 旧深名線の幌加内駅は数年前に火事で焼け、代行バスのターミナルも移転してしまっていていまはレールと駅名標のモニュメントがあるだけになっている。

 出発するまえに、今日泊まる予定の「ユースホステル そばの花」に電話を入れ予約をした。名前の通りそば料理が出るようで、そばアレルギーではないかということを尋ねられた。

 また、自転車で行くこと伝えると食事に遅れないように早めに来るように言われたが、朱鞠内まではあと35kmほどなのでまず大丈夫だろう。

 国道に戻り、少し走ると道の駅「森と湖の里ほろかない」に939到着。ここは地元のそば粉を使った手打ちそばが名物で、職人が目の前でそばを打っていた。もりそば(\560)を食べたがコシのあるそばでなかなかうまい。

 また、地元の物産品の販売コーナーもあったので土産物をいろいろと購入し洗濯物や不要な荷物と一緒に自宅へ送ってもらい少し身軽になった。

 道の駅を出発すると国道275号は、民家が全く見当たらない雨竜川の渓谷沿いに走るようになる。

 こんな山奥でも、道路工事の片側通行には何度も出くわす。自転車が通ることなど、一日に何度もあることではないと思うのに工事の人は、どこでも冷静で仕事に徹していたのが印象的だった。

 この辺りには、旧深名線の鉄橋が何箇所か残っていたので近くまで行き撮影した。国道から大して離れている訳ではなかったが、熊が出そうな雰囲気が怖かったのであまり奥まで行くのはやめておいた。

 

 雨竜川と離れ平地に出ると、以前からいかにも北海道らしい地名で気になっていた添牛内(そえうしない)の集落に入る。

 民家は少なく、以前は家があったと思われる更地も多く過疎化を感じたが、立派な郵便局と消防車が何台も止まっている消防署があり、その赤色がやたらに印象的だった。

 なんだか詩的な地名の雨煙別(うえんべつ)という所をすぎるといよいよ今日の目的地、朱鞠内に1230、到着。

 ここも、幌加内と同じく旧駅舎は既に無く、駅名標とレールのモニュメントがあり教会風の代行バス待合室が新築されている。

 駅前には「ようこそ森と湖と最寒のロマン幌加内町へ」という旧深名線の線路が書かれた看板があり、数年前までここに鉄道が通っていたことを感じさせた。


 まだ1300前でユースに入るのには早すぎるので、北海道最大の人造湖だという朱鞠内湖を見に行く事にする。

 10分ほど坂道を登り、湖を一望する展望台に到着した。しかし、この日はダムの放水の都合かとても水が少なく、水底が見え草が生えている所すらあるほどだ。

 ここで誰かに写真を撮ってもらおうと思い蚊に刺されながら待ったが、来るのはサークル風のバイクの集団や偏屈そうな兄ちゃん(セルフタイマーで自分を入れた写真を撮り風のように去っていった)やイチャイチャするカップルなど写真を頼みにくい人ばかりだ。

 30分以上待ち車で来た夫婦にようやく写真を撮ってもらい、湖岸に降りることができた。

 

 既に8月も終りに近いせいか湖岸のキャンプ場にはほとんど人がおらず、売店も開店休業状態だ。

 カントリーサインの絵柄にもなっている、昭和53年に零下41.2℃を記録した事を記念するモニュメントを見ていると、おじさんに写真を撮るように頼まれた。

 俺も写真を撮ってもらい話をしていると、俺と同じく「そばの花」に泊まるという事だったので、既に1500を過ぎているしユースへと向かうことになった。

 おじさんは車だったが下り坂だったこともあり、ほとんど同時に到着した。

 この、「ユースホステルそばの花」は去年オープンしたばかりで真新しく、二階の外壁はガラス張りで吹き抜けになっている洒落た建物だった。

 まだ他の客はいなかったので風呂に入った後、おじさんと話しをして過ごした。おじさんは千葉の佐倉で農業と、旅行会社の社長!をしているとのこと。

 また、毎年バイクで北海道へ来ていて今年は車だが、やっぱりバイクの方が楽しいと言っていた。

  その後、ライダーが一人と名古屋から来たという車の人バスで来たおじさんが加わり、計5人になった。

 夕食は当然、そばとそば料理が出て今日は昼も夜もそばになってしまったが腹も減っていたし、打ちたてのそばはとてもうまかった。

  2100頃からは、ミーティングと称する飲み会がありおつまみとワイン、コーヒー焼酎などが出たビールが無いのが残念だがこれも入って、一泊2食付\5090(ユースホステル会員ならさらに\1000引)なのだから文句を言ってはいけないというものだろう。

 飲み会はなかなか盛り上がり色々な話しをしたが、印象に残っているのは「北海道でこんな旅人を見た」という話題で、俺が昨日見た「ママチャリダー」などは序の口でトラクターで旅をする人、リヤカーを引く人、信じがたいが馬に乗って旅する人までいたということだった。全く、夏の北海道にはいろんな人がいるようだ。

 また、2時間位の間ずっとコーヒー焼酎を飲み続けていたにも関わらず、顔色一つ変えないこの宿の主人のこの酷寒の地でも野良猫がいる(冬は冬眠でもするのか?)という話に驚き、いかにも熊が出そうなこの辺りでも年輩の人ですら「見たことがない」らしい、という話は意外だった。

 2300を過ぎ消灯時間になり部屋へ戻った。

     本日の走行距離90.28km 平均時速12.22km 最高速度48.1km 走行時間7.22.55 自宅からの走行距離1561.67km以上(推定)