奥米隧道と奥米台隧道旧道(後編)

 君津市南部 三島ダム近くに存在する奥米隧道はその独特な雰囲気と比較的アクセスしやすい立地から、数ある房総の隧道の中でも良く知られた存在である。

 自分としては2008年に一度訪れたことがあるが、今回再訪して詳細な探索を行った。

 また、すぐ先にある奥米台隧道には旧道が存在することを確認しており、こちらの踏破も目指したい。

 旧道へ

 さて、この(仮)旧奥米台隧道だが、前回のレポ通り現道から直接確認できるため、その知名度は結構高いものがある。

 しかしながら、その先に続く旧道の詳細についてはあまり知られていない。
 前回レポのこの画像。

 前述の通り、上の道が正解。

 根元が曲がった立ち木が目につくが、ここが降雪地帯でないことは言うまでもない。
  
 おおっ、道が無い?

 前回レポ最後の倒木を越えて進むとこの地点。

 結構クリティカルな感じではあるが、ここは左側を慎重に下ると本来の路面高さに降りることができる。

 
 ガードレール発見!

 ガードレール自体は現行のものとそれ程変わらない雰囲気だが、内側に生えた木の太さが旧道化してからの年月を物語る。

 この辺りから断続的に路面上に竹や笹が現れるが後々これに悩まされることに…。

 廃道 

 ガードレールは30m程続いているが、程なくして再び崩落が始まり本来の路面よりも高い所を進むこととなる。

 この道が旧道化してから40年足らずだと思われるが、この路面上の自然に還るスピードの速さは房総の温暖な気候によるものか。
 
 大丈夫かいこれ?


 ガードレールは既に完全に土砂に埋もれ、本来の路面がどのような状態だったのか全く知ることができない状態が続く。

 しかし藪さえクリアできればとりあえず前進することは難しくない。
 あわわ…。

 この場所など間違い無く相当険しい崖っぷちなのだが、足元が殆ど見えない為不思議と怖さが無い。

 しかし万が一のことを考え、なるべく山側を進む。

 それよりも前方、マウスオーバーで赤丸の地点、道あるの?…。 
 笹混じりの濃厚な藪をかき分けながらなんとか進むと、問題の地点は近い。

 10月末のこの時期だからまだ良いが、もう少し早ければスズメバチが怖そうな状況。
   大丈夫でした…。

 心配された場所は意外にも良い平場になっており、一息つける場所だった。

 しかしながら前方に見渡せるゴールと思わしき地点はまだまだ遠い…。(マウスオーバーで表示)

 藪と崩落

 平場に別れを告げ、再び藪へ。

 ガードレールの地点から分程進んだが、一切の道路遺構に出会えていない。

 昭和40年代までは車道であった筈の道であるのだがあるのは藪と崩落ばかり。
 まさに激藪。

 今までも結構な藪をかき分けて進んだが、これは一段レベルが違うもの。

 笹藪、ススキ、灌木のコンボで、半そで装備などで挑んだならば即座に傷だらけになるのは間違いない。

 乗り越え、潜り、引きちぎり、なんとか進んでゆく。
   再び平場へ脱出。

 しかし前方の状況は明るくない。

 スタートから20分が経過したが、ようやく全体の半分を過ぎたころか。
    再びの激藪

 ここは笹竹メインで、複雑に絡み合った枝の正面突破はほぼ不可能。

 身を低くして潜るようにして進む。

 最初にこの状況に出食わせば、恐らく突入することもなかったろうが、ここで引き返す訳にもいくまい。
 ここもなんとか攻略。

 この法面沿いに竹が疎らに生える風景は、最初の眺望が開けた地点からも見えており、既に旧道も終盤か。

 
 来た道を振り返って。

 画面中央に白く見えるのが、先ほど展望が開けた場所と思われる。
 
   おそらく最後の藪を突破。

 この辺りまで来ると、鴨川側からのものと思われる踏み跡も現れるようになり、もはやゴールは間近。

 脱出

 旧道は左にカーブすると、下にトンネルを抜けた現道が見えてくる。

 ここまで来てもガードレール等の遺構は見られず。

 ちなみにスタートから約40分が経過している。
    旧道突破!

現道との間にはちょっとした高低差があり、本来の接続点ははっきりしないが、柄の部分が警戒色に塗られたミラーは分岐点に建っていたものか。
   鴨川側旧道入り口を振り返って。

 魅惑の素掘り隧道が既に見えている君津側と違い、踏みこむ人も少ないであろう鴨川側は藪の中にかすかな踏み跡が続くのみ。

 自分もこちら側だけ見たなら旧道の存在を意識することも無かったであろう。
 
 50m程戻った所が、奥米台隧道、鴨川側坑口。

 奥米隧道と似た雰囲気であった君津側とは異なる造りで、赤い染みが不気味だったあちら側よりも随分とスマートな印象。

 御影石の扁額には、平仮名で「おくごめだいずいどう」と彫られており、これは奥米隧道と同じ構成。

 
 昭和年竣工とあって、内部は完全に覆工がなされており、膨らみのない完全なカマボコ型の断面はダム近辺の工事用道路由来の隧道を思わせる。

 このような歩道どころか路肩も無い隧道は自転車にとって怖い場合が多々あるが、この程度の交通量なら全く問題なし。
 500m程の隧道を抜け、自転車が帰りを待つスタート地点へ帰還。

 もしも自転車同伴で突破できれば、不要な工程ではあったが自分の実力では到底無理というもの。


 完