国道157号(能郷〜黒津〜大河原〜温見峠その3)

 国道157号は石川県金沢市から、岐阜県岐阜市に至る国道であるが、福井〜岐阜県境の標高1000mを越える温見峠を中心とした70km弱の区間は、未整備な挟路が続く所謂「酷道」として知られている。(福井県側では現在進行形で大幅な改良が行われている地点も多い)
 その中でも岐阜県側の冬季閉鎖区間の始まりである本巣市能郷〜黒津間約6kmは「落ちたら死ぬ」というキーワードで知られる通り、ガードレールのない断崖の挟路が続き、特に名高い存在である。
しかし、その険しさゆえゲートが開いている事は稀で、最近では崩落により完全通行止めの状態が続いている。

 2010年5月末ここを訪れた。

 温見峠へ

 幾つ目かの洗い越しを過ぎると、いよいよ国道157号は温見峠へ向けて、本格的な峠道となる。

 この辺りで、根尾の道の駅で調達した飲み物がほぼ無くなり、なるべく飲料に適しそうな沢で水を汲んでみたがどうしても細かい砂などが混じるようであまり飲みたくない感じだが、この状況では仕方がない。
 
 今日は湿度は低いものの気温は結構高く、前夜からの疲れが出てきたこの状況では、どうしても飲み物が欲しくなるというもの。
 
 再び能郷白山を正面に見る。

 先ほどよりも大分標高差は縮まったように思える。

 写真右側の樹木と重なっている辺りが温見峠か。
 
 いよいよ峠が近付いたといった雰囲気だが、ここからが長かった。

 次のカーブを曲がれば、いよいよ峠を射程圏内に捉える…。といった希望を何度も裏切られ、進行ペースがガクンと落ちる。
 
 自転車ならではの感覚だが、実際つらいものだ。こんなときハンディGPSがあればいらぬ期待をせずに済み便利だと思う(携帯は圏外)。
 標高1000mに近付いた辺りで、道端に残雪を見つける。

 今日はこんな程度だが、GW頃には路上を埋め尽くす程の残雪と倒木があったようなので、最近の気温上昇で一気に雪解けが進んだのであろう。

 倒木に関しては、一コマ前の写真にも処理した跡が写っているように完全に撤去が済んでおり、四輪の通行にも支障は無い。
 

 能郷白山 

 午前10時、ようやくといった感じで県境の温見峠(標高1050m)へ到達。登山者のものと思われる車も何台か駐車されている。

 根尾を出た時刻を考えればいかにも時間がかかりすぎで、自分の実力の無さを痛感するがこの後には能郷白山登山が控えており、体力を使い果たす訳にはいかなかった。

 峠の西側に登山口があり、自転車を置いてすぐに登山を始めることができる。

 最初は新緑の中をほどほどの勾配で登って行くルートで、写真を見れば爽快なプロムナードといった感じだが実際は昨晩からの疲れに加え、この日は大変にコバエが多く慣れるまでは結構つらい登りはじめだった。
 
 登山口から山頂までは、標高差600m コースタイム2時間程で、それ程長い道程では無く登山道も非常に明瞭だ。
 樹木帯から灌木帯に移る頃には足も慣れ、咲き始めた花を楽しむ余裕も出てきた。

 写真はムラサキヤシオツツジか。
  
 途中カタクリの群生地を通る。

 この日は休日で、登山者も結構多かったが福井側から来た関西の人が多いようで、国道の通行も問題は無さそうだ。
 ショウジョウバカマ
 この日は他にも多くの花を見ることが出来たが、他の登山者の話題に上っていたザゼンソウは見つけることが出来なかった。

 山頂へ

 灌木帯から笹の尾根道に移る頃には何度か雪渓を通過する。

 大分雪は緩んでいて、これが消えた直後は登山道は大変なぬかるみ状態になりそうだ。
 登り始めて約1時間で、山頂部を視界に捉える。

 既に山頂間近にも思えるが、ここからいくつかのピークを越えてゆかなければならず、まだ全体の半分程しか進んでいない。
 休憩を含め約2時間ちょっとで、標高1617mの一等三角点のある山頂へ到達。 
 
 ここは余り眺望が良くなくまた5人組位のパーティーが盛大に昼食をとっていたので、白山権現社の祠のあるもう一つのピークへ進む。
 雪渓を越え、三角点から5分程で建て直された新しい祠のあるピークに到達。

 残念ながら薄く雲が掛かっていて眺望はイマイチだが、途中あれほどいたコバエはここには一匹も居らず快適だった。 ここで昼食と少し仮眠を取った。

 福井側へ

 夕方までに大野市街に到着すべく、下山を開始する。

 既に13:30近くになっているが、日の長いこの時期だからか、これから登ってくる人ともすれ違った。
 
 また行きにすれ違った人と明らかに同じと思われる人物と再びすれ違い驚いた。忘れ物にでも気付いたのであろうか。

 
 
 下りは、灌木帯に入るとやはりコバエにまとわりつかれ快適でないのもあって、自分なりに頑張って1時間半位で下山できた。
 
 一人関西弁の中年女性がすごいペースで追い抜いていったが、自分が登山口に着いた時には車をUターンさせようとして側溝に嵌りそうになり大苦戦していた。
峠に戻ると、黒津〜能郷間の迂回ルートの県道がさらに時間帯通行止めになるという内容の看板が立っていた。

 この看板日中9:00〜17:00までの間で通行可能なのは合計しても僅か2時間しかなく、工事の人の休憩時間のみ通れるというのが実際なようだ。

 しかしそもそもこの峠までの国道157号は公式にはまだ冬季閉鎖中な筈ではあるのだが。

 件の女性は、たまたま通りががったバイクの人に車を回してもらい何とか事なきを得たようだった、  
 山頂での仮眠もあり時間は既に15時を過ぎており、夕方までに大野市街に到着すべく、いよいよ福井側へ走り出す。

 長い峠の下りは、登りよりも危険が大きく真夏以外は体も冷えるので、イメージほど爽快というわけでもないが、峠を過ぎ、いままで貯め込んだ位置エネルギーを一気に解放するこの瞬間だけはいつも気分の良いものだ。


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