公共交通機関利用で目指す鈴鹿セブンマウンテン踏破
(概略後編)
  

 昭和39年に近鉄が制定した「鈴鹿セブンマウンテン」 北から藤原岳1144m 竜ヶ岳1099m 釈迦ヶ岳1092m 御在所岳1209m 鎌ヶ岳1161m 入道ヶ岳906m 以上7峰の踏破を目指すのが、今回の企画である。

 
近鉄が企画した登山大会が由来というこの7峰だが、三岐鉄道三岐線終点の西藤原駅から徒歩で登れる藤原岳以外は交通の便が良いとは言えず、最もメジャーな御在所岳さえも登山に適した早朝のバスは夏季の土日にしか運行されていない。
 その他の山に関しては現在では殆どバスも無く、タクシーを利用しないかぎり実質的に自家用車利用が必須になっている。

そんな鈴鹿セブンマウンテンだが、輪行による自転車利用で回ってみようと思う。登山口までのアクセスだけなら自家用車に利便性で到底かなわないが、その先の林道歩きなどではメリットもありそうだ。
 



 C入道ヶ岳(906m)

 2010年4月10日


 近鉄湯の山駅から宮妻峡を経由してキャンプ場の奥へ続く林道を進む。

 この林道はゲートがガッチリ閉まっていて一般車の通行は出来ないが、登山者が利用することは勿論問題無く、自転車があれば相当に役立つ。

 林道終点の少し手前から登山道に入り、溝道と樹木帯の急坂をこなすと山頂まで続く笹原に出る。
 
 この日はシャクナゲが見頃を迎えており、休日なのもあり登山者は多かった。
 林道終点から山頂までは僅かな距離であり、自転車をそのまま山頂まで持ってきた。

 林道から登山道に入る溝道の部分は急勾配でキツかったが、そのあとは特に苦労無く山頂まで到達できた。

 
 山頂から来た方角を振り返ると、尖った山頂が印象的な鎌ヶ岳とその向こうには2週間前に訪れた御在所岳が雲をかぶっていた。

 今日スタートした宮妻峡から鎌ヶ岳へ至るルートもあるようだが、結構なロングコースなようだ。






 帰りに林道終点からさらに先へ進み、本当の最終地点へ行ってみたが道はスッパリと消えておりこれ以上延長されることはなさそうだ。


 コース

 湯の山温泉駅〜宮妻峡〜林道〜登山道〜山頂〜登山道〜林道〜宮妻峡〜高角駅


 



 D雨乞岳(1238m)

 2010年4月23日

 恐らく、「鈴鹿セブンマウンテン」のなかで最も三重県側からのアクセスが悪いと思われる雨乞岳。

 鈴鹿スカイラインの武平峠からのルートもあるようだが前述の通り、長期通行止めが続いており今回は滋賀県永源寺町の甲津畑からのルートを行く。

 正面に見える筈の雨乞岳は雲に覆われており、きょうは快適な山行とはいきそうにない。


 最奥の集落の先へと続く林道の途中に登山道の入り口がある。

 こちらも未舗装ながら元林道であり、とりあえず自転車に乗車して進むことができる。
 しばらく行くと詳細な時間の入った行程案内があるが、これによれば杉峠までは2時間半程のようで、先ほどの3時間は少し大げさなようだ。

 しかし結構なロングコースであることに変わりは無い。

 45分程で木材とトタンで出来た避難小屋に到達する。

 ここまで登山道は一応元林道の体裁を保っており、コースタイム以上のペースで進むことが出来たが…。

 雨乞岳 

 林道が車道として開通していたのは、どうやら先ほどの避難小屋の所までだったようで、その先は完全な徒歩道となる。

 苔むした石がゴロゴロする道は歩きづらく、時折飛び石の渡渉もあるが、勾配はそれ程急でなく助かる。
巨木が生い茂る道を進み、なんとか標高1036mの杉峠に到達。

 最初の快調なペースはどこへやら。すっかり自転車はお荷物へと変わり結局コースタイムと変わらない時間がかかった。
 山頂方面はというとご覧のとおりしっかりガスっており、比較的眺望に恵まれた今までの山行の様には行きそうにない。
 そしてこの笹の海。

 これでも立派な一般登山道であり、ここ以外のルートは無い。

 写真では解らないが足元にはそれなりに踏み跡があるので、道を失わないよう慎重に行く。
 背丈以上の笹の海を抜けた先が、標高1238mの雨乞岳山頂。

 晴れていれば360°の眺望を楽しめるようだが、今日は完全にガスっており辺りは真っ白である。

 少し写真を撮っただけでこの山頂を後にしたが、帰路は湿った笹によってすっかり濡れてしまい、非常につらかった。 


 コース

 近江鉄道八日市駅〜甲津畑〜林道〜杉峠―山頂往復

 E鎌ヶ岳(1161m)

 2010年4月27日

 「鈴鹿の槍」とも呼ばれ、その尖った山頂が印象的な鎌ヶ岳。

 鈴鹿スカイラインの武平峠から最短距離で山頂に至るコースもあるようだが、前述の通りスカイラインは長期通行止めが続いており現状三重県側から武平峠へたどり着くののは容易ではない。

 今回は以前訪れた入道ヶ岳と同じ宮妻峡からのコースを選択した。

 以前入道ヶ岳へ行った時は林道の終点近くから登山道へ入ったが、鎌ヶ岳へのコースは大分手前に分岐があり、そこへ自転車を置く。

 前日の雨で増水した沢を何度か渡渉した後は一コマ前のような谷底の道を行く。
 
 踏み跡が消えやすい谷道は時折不明瞭で立ち止まって考える場面もあった。

 テープや踏み跡を探しながら国土地理院の地形図では宮越山となっている水沢岳まで登ると、眺望に優れた尾根歩きになる。
 水沢岳から少し下ると「馬の背渡り」と呼ばれる難所に差し掛かる。

 手掛かりの少ない痩せた尾根は少々怖いが、この日は風も無く、慎重に行けば問題なかった。
 やがて、正面に鎌ヶ岳の尖った山頂を望むようになる。

 予定では、ここから山頂へと続く鎌尾根へと入る予定だったが、見事に分岐を見落とし結構な時間をロスすることになった。

 
 なんとか正しい道へ復帰し、展望の優れた鎌尾根を進むとやがて山頂も間近となる。

 現在進行形で崩落が進むガレた岩肌が目立つ山頂部だが、ちゃんとルートはあり、安全に登ることができる。
 「鈴鹿セブンマウンテン」のなかで唯一三角点の無い、標高1161mの山頂だが、この日は誰もいなかった。

 鈴鹿の山の中でも人気の山で、天気も良かったこの日だが前日の大雨で山行を控える人が多かったのであろうか。
 山頂からは復旧工事の進む鈴鹿スカイラインと御在所岳を一望できる。

 ここから武平峠までは一見近そうに見えるが、当然勾配相当急で、結構な難コースなようだ。
 帰路は山頂下の岳峠から、カズラ谷コースを下る。

 鎌尾根よりも歩きやすく、下山路には適していると思うが、最後の林道合流点手前のの増水した沢だけは結構難儀した。


 コース

 近鉄湯の山温泉駅〜宮妻峡―水沢峠―山頂―カズラ谷―宮妻峡〜菰野駅

 F藤原岳(1140m)

 2010年9月13日


 鈴鹿セブンマウンテン最後の一座、藤原岳。

 前述の通り、ここは三岐鉄道三岐線の終点西藤原駅から、徒歩で登る事ができ最もアクセスの容易な山である。

 そのため登山者も多いようで、聖宝寺登山道には一合目から順にりっぱな標識が立てられている。

 八合目からは、ときおり石灰石の露出する二次林の道になる。

 このような山は鈴鹿の中でも特にヒルが多いと言われているが、時期のせいか被害に遭うことは無かった。
 
 九合目までは比較的すんなり行くが、そこからが非常に長く感じた。

 実際地図を見れば、九合目からこの藤原山荘までは八合目〜九合目の倍は距離があるようだ。

 この建物は「山荘」と名乗ってはいるが実態は無人の避難小屋である。辺りには水場は見当たらず、ここに泊まるならば水の確保が問題になりそうだ。
 山荘から展望丘までは、鞍部を経由してもうひと登りすることになる。

 山荘方向を振り返れば、ドリーネと呼ばれる窪地が点在するカルスト台地を見下ろす。

 藤原岳はほぼ全山が石灰石で構成されており、中部の秋吉台とも呼ばれているそうだ。

 なおこの日は妻が同行した。

 
 他の鈴鹿の山と同様(雨乞岳を除く)いまいち勢いの無い笹の切り開き道を登った先が展望丘。
 
 この日は朝のうちは小雨がパラついていたりと不安定な天候であったが、この頃にはすっかり回復した。

 大概の山では菓子パンやおにぎりを齧る程度で済ます昼食だが、この日は珍しくラーメンを作って食べた。




 この展望丘の他にも最高地点の天狗岩というピークや他に三角点もあるようだが、この日は時間がなく割愛したが時期を改め再び訪れるつもりである。
 
 鈴鹿セブンマウンテン踏破を達成した人は数えきれない程いると思うが、自家用車を全く使わずタクシーやバスにも乗らずという人は僅かであろう。
 コース

 西藤原駅―聖宝寺道―山頂往復