福島県金山町大塩の炭酸井戸2007〜2016

  福島県大沼郡金山町、大塩温泉の近くに天然はの炭酸水が湧く井戸が存在し、かつては知る人ぞ知るといった感じであったが、現在ではテレビ等で何度も取り上げられ結構メジャーな存在となっている。

 かつて2007年1月にここを訪れた時は時期的なものもあるが見つけるのに苦労するほどひっそりとした佇まいであったが、2012年7月末に再訪すると、知名度の上昇に伴ってか大きく変貌を遂げていた。

 炭酸井戸への道2012 


 只見線は2011年7月の豪雨災害により2012年9月現在でも会津川口〜大白川間で運休が続いており、最寄りの会津大塩駅も休業中であるが、代行バスの運行はあり、公共交通機関で炭酸井戸を訪れることは不可能ではない。
 
 大塩駅から国道252号を若松方面へ進むと、良く目立つ看板が炭酸井戸の場所を案内している。

 手前の控え目な方の案内を含めて2007年当時には無かったもの。
   案内通りに進むと、株式会社ハーベスなる建物に突き当たるが、これが後ほど出てくる旧「会津心水」の工場で、炭酸水を濾過ボトリングして販売している。

 
 ハーベスのすぐ脇に炭酸井戸への入り口がある。
 木製の車止めが見えるが、道路を挟んだ反対側に3〜4台は停められそうな駐車場があり、車でここまで来ても問題は無い。

 炭酸井戸への道2007

 ここからは少しの間、2007年1月に初めて炭酸井戸を訪れた際の様子を紹介する。

 冒頭にも書いたが、この時は本当にひっそりとした場所だった。


 JR只見線会津大塩駅がこの炭酸井戸の最寄駅となる。
 大雪によってしばしば運休することもある只見線だが、この日は順調に走り、時刻表通り到着した。
 
 全線を通して非常に運転本数の少ない只見線だが、この付近は特に少なく、下り、上りともに各3本のみでこの列車の次の上り列車は約4時間後の19時台まで無く、それが最終列車である。
 
 線路と平行する国道252号を会津川口方面に15分ほど行くと、目印の看板が見えてくる。

  交通量の少ない道ではあるが、路肩は狭くそれほどの量ではないとはいえ除雪した雪が積み重なっており結構危なっかしい。
 
 看板通りに進むと、すぐにこの会津心水の工場が目に入る。

 目的の井戸はこの近くにあるはずだが、建物の先は見るからに除雪されておらず、簡単にはたどり着けそうに無い。
 
 工場の玄関先では、関係者とおぼしき男性が雪かきをしていたが、咎められるのを恐れこの時は声を掛けなかった。
 工場の前を道なりに進むとこの状況である。替えのズボン等は用意してあるので、雪原に踏み込む事に躊躇はないが、やはりこの時期には無理なのではないかと一瞬思ったりした。

 写っている車は他県ナンバーで、水汲みに来たのではないかとも最初思ったがそれらしき人はおらず、違うようだ。

 炭酸井戸への道2007 

 この後道を間違え、辺りを10分以上彷徨ったのちようやくこの看板を見つけることが出来た、実際には上の写真の車のすぐ先に井戸への道があったのだった。
 
 ちなみにこの2枚の写真は帰りに撮影したものなので、写っている足跡は全て自分のものである。
 この看板からほんの20m程の所に炭酸井戸はあったのだが、振り返ってみると、この通り自分の他には、うっすらと一人分の足跡が残る程度でこの時期に炭酸井戸を訪れるひとは多くはないようだ。
 この日は正月の大雪も雨の影響などで大分減り、一帯の積雪量は50cm程だったというのにこの太ももまで埋まる状況である。
 
 本当に雪深い日ならばたどり着くのは不可能だったのかもしれない。

 さて肝心の炭酸井戸だが、雪にも埋もれず満々と水を湛えボコボコと湧き出す様子がしっかりと確認できる。
 
 水位は充分に高いようだが、用意した秘密兵器「汲み上げ1号」をザックから取り出し早速作業に取り掛かる。
炭酸の湧き出す様子を動画に収めたので、是非ご覧いただきたい。
 
 この炭酸水の湧き出す様子は味とともに一見の価値ありだと思う。 
 動画(455KB)

 到達

 この日は手を伸ばせば届くほど水位が高かったが、汲み上げる道具等はあるいは雪に埋もれているのか見当たらず、「汲み上げ1号」は充分な活躍を見せた。
 
 夏場などは何メートルも水位が下がる事もあるようで、そんな時は道具が必須であろう。
 無事に用意したペットボトル3本を満タンにし、試しに少し口に含んでみたが、想像以上の炭酸ぶりだった。
 
 三ツ矢サイダー並とまではいかないが、CCレモン級の炭酸感はあり、これが自然に湧き出しているのは驚きである

 この後来た道を無事に戻り、再び工場の前を通ると先程の男性が雪かきを続けていたので、炭酸井戸についての話を伺う事が出来た。










 話によれば、
 北海道や九州にも同じような炭酸井戸があるが硬度が高く飲みづらく、ここの炭酸水は非常に飲みやすい泉質で良い。 
 昔は子供がここの炭酸水に砂糖を入れサイダーのようにして飲んでいた。
 一年の中では冬が一番水位、泉質ともに安定していて炭酸も強い

 などの事を知る事が出来た。
帰りにこの工場で製造している「aWa心水」 250ml入りを3本購入し宿へと戻った。
 こちらは専用のポンプで汲み上げた物を非加熱ろ過殺菌で仕上げた製品だが、後で飲み比べて見ようと思う。

 頂いたパンフレットによると、ここの炭酸水は明治時代には「芸者印タンサン ミネラル ウォーター」としてヨーロッパに輸出していた事もあったがその後休業を余儀なくされ、近年復活を遂げたとの事だった。
 
 宿に持ち帰った天然炭酸水は、夕食後焼酎割と梅酒割で頂いたが非常に美味だった事はいうまでも無い。
 

 夏に訪れた他のレポートを見ると、雑味が感じられたり、水量の少ない時期には細かい砂が混じる事もあるようで、このように楽しめるのは冬からGW前位までのようだ。

 炭酸井戸への道2012〜2016 


 ここからは2012年のレポートに戻ります。

 ご覧頂いたように2007年1月には除雪もされず、ひっそりとしていた炭酸井戸だが、現在では画像通り立派な屋根が付き、ちょっとした観光地といった雰囲気に。
 さて肝心の炭酸水はといういと、井戸自体は以前と変わっていないようだが、前述の通り真夏のこの時期は水位が低い。

 2007年1月には手が届く程だった水位も今回は2m程下に。

 しかしながらボコボコと湧き出す様子は以前と変わらず、ただのたまり水ではない。

 またヤカンは備え付けのもので、手ぶらでいっても水を汲むことは難しくない。
 いよいよ試飲。

 そのお味はというと…。
 
 うーん少々鉄臭い…しかし炭酸感は充分。
 
 前述の通り夏は、泉質がイマイチのようで、おいしい炭酸水を楽しみたいのならば冬から雪解け期までが良いようだ。
 
 看板はクリックで拡大します
 
 上の看板にもある大塩温泉はかけ流しの炭酸温泉が楽しめる、素朴な温泉場で炭酸井戸を訪れた際は、是非泊っていきたい所。

 地図にある通り、炭酸井戸からも徒歩10分程度で着く場所である。
    2016年1月 再訪しました

 この日は前日沿線の早戸温泉に一泊した後、只見線と代行バスを乗り継いで大塩温泉を訪れた。

 以前の3往復体制ではこういった下車観光も楽ではなかったのだが、代行バスは列車時代よりも増発され、只見方面は10時48分の次が14時33分と便利で観光に適した間隔になっているのは皮肉なものだ。

    代行バスは大塩駅から、国道に出たところの元小学校前から発着しているが、自分達の他には殆ど乗客もおらず、地方の公共交通機関について否応なしに考えさせられる。 
    大塩駅から1km程川口方面に行くと自身3回目の炭酸井戸。

 この2016年1月は、各地のスキー場がオープン出来ないなど、最初に訪れた2007年を下回るほどの非常に雪の少ない時だったが、この日は前夜に降雪があり、30cmほどの積雪だった。

 通常ならば1mを超える積雪があることも珍しくない筈だが、そんな時どの位除雪が行われているのかは残念ながら不明である。
   
   
 他に観光客もおらず、ひっそりとした炭酸井戸。(写っているのは家族です)

 2012年と比べると少々年季が入った感じか。
 
 夏には仰々しいと思えた太い柱の屋根だが、豪雪に耐えるには必要なものなのかもしれない。 
   
   
   
 やはり、冬季は水位が高いようでひも付きのヤカンを使わずともひしゃくで簡単に炭酸水を汲むことができる。

 備え付けのコップは、鉄臭さを暗示するように内側が若干赤く変色していたが…。

 一口飲んだ感想は…。

 「うまい」。炭酸も充分で鉄臭さも皆無。

 やはりこの炭酸井戸の旬は冬だと再確認することができた。 

 
   
 隣には炭酸水をろ過、ボトリングして販売して「 奥会津金山 天然炭酸の水」として販売している株式会社ハーベスの工場があり、「 奥会津金山 天然炭酸の水ミニ歴史館」も併設されているが、平日のみのオープンということらしく残念。

 大塩温泉2007〜2016

 
 2007年1月に訪れた際宿泊した、大塩温泉岩崎屋旅館は料理も上々で、炭酸泉の温泉があり体の芯まで温まる事が出来た。

 こういった山間部の旅館では、値段に見合った内容の料理を提供しようと、冷凍物の海産物や時期外れの食材が使われることも良くあるが、ここではシンプルながら味わい深い川魚を中心とした料理を堪能することができた。

 春に訪れればさらに旬の山菜料理を楽しむことができるであろう。

 また宿から徒歩2分くらいの所には源泉の異なる共同浴場もあり、こちらも全く観光地化されていない昔ながらの雰囲気でおすすめである。
   
 内湯の無色透明な炭酸泉に対して、こちらは素朴は感じの濁り湯になっている。

 この日はたまたま他に客はおらず、こじんまりとした木の浴槽でゆっくり温まることができた。 
   
 2012年7月の大塩温泉公共浴場。

 この時は時間もあまりなく入浴も考えなかったが、外見も変化がなく大きな被害もなかったものだと思っていたが…。
   
    
 2016年1月の大塩温泉公共浴場。

 前回の訪問時は大きな被害もなかったと思っていた公共浴場だが、実際には建物の流失こそ免れたものの下の浴場部分は天井まで水につかる大きな被害があったようだ。

 そして2015年8月、ご覧の立派な建物が再オープンを果たし地元の人を中心に連日賑わいを見せている。
   
 
 建物は新しくなっても、源泉かけ流しの上質な湯はそのままで、体の芯まで温まることができた。 
 また外には只見川を望む露天風呂も備えられているが、源泉の温度が低く冬季は加温していることもあってか、使用されていなかった。
 
   
 浴室の隣には、テレビやポット等も備えられた畳敷きの休憩室もあり、つい長居してしまいそうだ。 
   
    
 廊下には、2011年7月の豪雨災害時の様子も掲示されていた。

 現在も運休が続く只見線を始め、多くの被害を出した豪雨災害だが、普段の只見川の穏やかな流れからは想像もできない自然の脅威である。
   


 ちなみに「井戸へ汲みにいくのはちょっと」という方には岩崎屋旅館の洗面所に炭酸水の出る蛇口もあるので、やや炭酸度は低いが試してみる価値はあると思われる。