国道152号未開通(不通)区間 青崩峠 (第一回)   


国道152号はを結ぶ長野県上田市と、静岡県浜松市を結ぶ国道であるが、険しい山岳地帯を縦断するルートをとっており途中、2ヶ所、地蔵峠と青崩峠の未開通区間が存在する。
 今回は長野〜静岡県境に位置する青崩峠を訪れるつもりである。
標高1082mの青崩峠は、長野県側からであれば兵越林道、草木トンネルの迂回ルートへの分岐を過ぎたのち、車道終点から登山道を経て到達できるという。
 車利用であれば、峠まで到達できても当然戻ってこなくてはならないのだが、そこは自転車の利を生かし静岡県側への通り抜けを目指したい。

 泰阜村


2010年1月中旬


 今回の探索の出発点は、前回レポした田本駅だがこの飯田線温田駅周辺で既に13時近くになっており17時には暗くなってしまうこの時期であることも重なり、既に苦しい状況である。

 例年雪は少ない南信地方であるが、標高の低いこの辺りでも日蔭には残雪があり、この先の状況は予断を許さない。
 
 12時57分に温田駅に到着。

 長い飯田線のなかでも無人駅の多いこの辺りだが、泰阜村の中心部で特急伊那路も停車するこの駅はしっかりと駅員がいる…と思ったが、どうやらこの温田駅も無人なようだ。

 しかし外にクーラーの室外機がある所からみて、完全に無人というわけではなく保線係員の詰所などがあるのかもしれない。
 飯田線と並走する県道1号から、真新しい十方峡隧道を抜け、国道418号へ入る。

 隣にある旧隧道は旧飯田線の隧道を転用し、信号機による片側相互通行が行われていたという(新)十方峡隧道の前後はバイパス工事が完成し、広々とした歩道付き2車線が確保されているが、その先は旧来のままの狭い所も随所にある。(マウスオーバーで別の日撮影した旧十方峡隧道平岡側を表示します)
 ポニートラス橋の清水橋を渡ると、そのまま坑門だけがコンクリート製で内部が完全に素掘の清水トンネルに入る。

 内部は途中でカーブしていて見通しが悪いが、ちゃんと照明が設置されているのは国道故か。

 国道152号へ 

 独特なコンクリートアーチの旧橋が残る月之島橋を過ぎると、道路脇に内部が金属で補強された旧隧道が姿を見せる。

 これは島谷隧道で、隧道で山を貫き直線的に進む旧道に対して、現道は隧道を掘らず山裾にそって進むという珍しい対比になっている。
 道の駅遠山郷の手前でいよいよ国道152号に入り、青崩峠へ向けて標高を上げてゆく。

看板にある「三遠南信自動車道」とは長野県飯田市から愛知県浜松市北区までを結ぶ予定の自動車専用道路であり、沿線の各地で工事が行われ暫定開業した区間もあるようだ。

 この青崩峠へ向かう国道152号でも表題の兵越トンネルは未着工ながら、現道の西側で「小嵐バイパス」なる道路の建設が進んでいる模様である。
 しかし前のコマには「21世紀へ向け走り出す」とあったが三遠南信自動車道の全通時期は誰にも予想出来ない所であるようだ。

 最奥の集落を過ぎ、1km程進むとこの地点に出る。

 標識にある通り、左へ進めば兵越林道、草木トンネルを経由して水窪町方面へと進むことができる。

 目指す青崩峠は右で、この先も国道152号として指定されているが県境部分が未開通なのは前述のとおりである。

 標識の×印はガムテープ製でオフィシャルなものでは無い。 
 ここからは、交通量も非常に少なくなり道も一層狭くなる。

 古びた標識には「この先6km通行不能」とあるが、既に15時を過ぎており、峠越えはともかくとして車道終点まで行くのも厳しい状況か。

 このような先に集落もない行き止まりの道がなぜ除雪されているかというと…。
 この分岐を下った先に一軒宿があり、そのために交通が維持されているようである。

 国道は直進だが、いよいよここから冬季閉鎖区間に入るようだ。

 いくつかの轍は直進しているが除雪されているような様子はない。

 冬季閉鎖

 冬期間全面通行止のお知らせ

 区間 国道152号これより先
 飯田市南信濃 小嵐〜青崩峠
 期間平成21年12月14日〜平成22年4月2日まで。

 車道終点から登山道を登った先にあるという青崩峠まで国道指定されているとは思えないが、ともかくここから先は通行止となる。

 4月2日までという期間は比較的短く思え、やはりこの辺りは標高の割に雪は少ないのであろう。
 

 
 轍は早々に消え、一面に薄く雪が積もった路面になる。

 先へ進んでいる足跡は小動物のものか。
 「秋葉街道入口」とある。

 秋葉街道とは現在の浜松市天竜区春野町にある秋葉神社へと通じる参詣道であり、日本海に面した新潟県の糸魚川と太平洋側を結ぶ「塩の道」や武田信玄が遠州へ兵を進めたルートとも重なる旧来から往来の多かった街道で、この国道152号と重なる部分も多いようだ。 

 しかしこの看板の先は急斜面に僅かな踏み跡があるだけで、とても踏み込む気にはなれない。
 標高が上がる度に路面を覆う積雪は増え、自転車を押して進むのも一苦労となる。

 現在時刻は15時半を過ぎており、後一時間もすれば暗くなり始めるこの時期である。

 既に峠越えは絶望的で、すぐにでも撤退を考えなければならないのだがせっかくここまで来たのだから車道終点まではせめて行きたい所。

 そして

 吹きだまりになっているような所は積雪も深く、一歩歩くごとにズボッと足が埋まる。

 しかしこの辺りの雪はサラサラのパウダースノーで靴や自転車の駆動部にくっついて固まるようなことは無く、まだ助かる。

 その分気温は低いのだが

 カーブを曲がる度に車道終点が見える事を期待するも、ことごとく裏切られ続け気力、体力共に消耗気味である。
 ゲートを過ぎてからちょうど1時間、時刻は16時を過ぎた頃。

 行く手に看板とコンクリートブロックが!

 この看板は、これから先は治山工事の資材運搬用専用道路だから関係者以外は通ってはいけない。

 という内容でいよいよ車道終点も近そうだ。

 尚先へと進む足跡は動物のもので、最近この辺りを訪れた人は皆無なようだ。 
 しかし、ここでタイムアップ。

 既に16時半近くになっており、明るいうちに麓まで戻る事さえギリギリであろう。

 半分濡れた手袋の冷たさと、体の冷えも限界だ。

 自分の刻んだ轍と足跡をひたすら戻る帰り道は、意外に乗車できる場面も多く、40分足らずでゲートまで戻ることができた。


 今回は時間の無さと、気候の厳しさに負けた格好だが時期を改め必ず再訪するつもりである。 




 そして、半年以上が過ぎた10月中旬。

 今回は水窪側から青崩峠に挑むべく、豊橋7時台の列車で中部天竜へと向かった。





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