井川雨畑林道(後編) |
井川雨畑林道は、山梨県南巨摩郡早川町の雨畑と、静岡市葵区の井川湖を結ぶ全長約45kmもの長い林道である。
県境の山伏峠は標高2000m近く、唯一の南アルプスを横断する道路でもある。かつては山梨県側に長いダート区間が残り、崩落や工事による通行止めも日常茶飯事だったようだが、現在では大分舗装化も進んでいるようだ。
山梨県のHPによると、山梨県側雨畑から峠までの全長28,044mの内23,456mという妙に並びの良い距離が舗装済みとなっており、約5kmのダート区間があるように見えるが実態はどうやら異なるようだ。
登りは続く |
最近舗装化され、比較的路面状態の良好な山梨県側だが、当然工事はあちこちで行われている。 これは砂防ダム関連の工事のようだが、斜面のはるか上までワイヤーを張って資材を運び上げており結構大がかりなものだ。 比較的路面状態も良好と書いたが、このような険しい山岳道路ではたとえ一度舗装してもすぐに落石にさらされるのが宿命であろう。 行き先のガードーレルが傷んでいるのは落石がヒットした跡であろうか、今まで幸いにしてそのような事はないが、自転車での走行中に生身の体で直撃を受ければタダでは済まないのは明白だ。 井川湖29km 山伏峠13km。 先ほどのゲートから約3km進んだようだが、45分もの時間を要しており道は険しさを増している。 下に見えるのは先ほど通過した工事個所であろうか。 この辺りでは何度も何度も深い谷を巻いては標高を稼いでおり、眺めは良い。また湧き水も豊富で、真夏でも水分補給の心配はしなくても平気なのも良い点だ。 |
天空の回廊 |
再び遥か下に先ほどの工事個所を望む。 山肌の崩落地点の補修が目につくがどうやってあんな所へ資材を運んだのだろうか。 路面状態はというと、ごく最近舗装されたばかり見ての通り実に良好だ。 長畑ゲート以来進むにつれて道が良くなっているのは、峠の方から工事を進める「九州新幹線方式?」だからか。 道は何度も方角を変えながら登って行く。 既に麓を出てから3時間を経過したが、峠はまだ先のようだ。 これぞ天空の回廊。 今まで通ってきた道が手に取るように見え、いかにも「登ってきた」という実感がある。 行く手にも時々ガスがかかり、かなり標高を上げていることを実感する。 道幅こそ1.5車線程度ながら、道は良好で既に林道という感じではない。 休日ということもあってか、工事車輌以外の車の通行も結構あり、この辺りは「井川雨畑スカイライン」とでも呼んでも差支えない状況になっている。 |
山伏峠 |
現在時刻午前11時ちょうど。林道起点から4時間もの時間を掛け山伏峠に到達。 樹木が青々と茂っているが、ここは標高1800mを超える唯一の南アルプスを横断する全国屈指の高所にある車道峠である。 やや見づらいが、後ろの案内には井川雨畑林道 終点とあり、ここが県境のようだ。 終点とはいっても当然道は続いており、ここからは静岡市が管理する井川雨畑林道となる。 道の反対側には県境の標識もあり、ここからは広大な面積を誇る静岡県静岡市葵区となる。 この地点から峠の名前の由来になった「山伏」(やんぶしと読み岳も山も付かない)への登山道があり、まだ時間も早いのでちょっと登ってみる。 登山道は良く整備されていて、特に急な所もなく歩きやすい。 樹木帯のなかをゆっくりと登っていく。 登山とはいっても標高差は200m程で、九合目から登り始めるようなものである。 30分程で尾根に出ると、山頂は目の前だ。 程なくして標高2014mとある山頂に到達。岳の文字が取り外されているのがわかる。 ここには写っていないが山頂は昼食を取る多くの登山者で賑わっており、人気の山のようだ。 とはいえ自分のような半ばインチキ登山の人よりも静岡県側の梅ヶ島温泉から登ってきた人が殆どのようだ。 |
山伏山頂 |
まるで庭園のように刈り込まれた笹と立ち枯れた木は絵になるが、自然の風景というわけではなく、鹿の食害等の影響であろう。 大台ケ原でも見たが、鹿の食欲はとてつもないものがあり、届く範囲の毒草を除く植物を辺り一面食べ尽くす程だ。しかし鹿が増えた原因は何なのであろうか。 ここでも高山植物のヤナギランが金網で守られたところでひっそりと咲いていた。 山頂からは富士山や南アルプスの山々の眺めが素晴らしいとの事だったが、今日はそれ程天気も悪くないものの、ガスが掛かっていて眺望は無いが、これはこれで幻想的な風景ではある。 登山口へと下って行くと。眼下の雲間に道が確認できた。 これから下って行く静岡県側であろうか。 このレポートも九合目を迎えたが、ここからようやく静岡県側に入る。 この静岡側も距離にして約17km 標高差1000m以上の険しい山岳道路だが、どうしても下りは撮影の頻度が下がる。詳細な観察はできなかったことをご容赦願いたい。 |