中央西線旧線 高蔵寺〜多治見間 7号8号トンネル(前編)


中央西線高蔵寺〜多治見間には昭和41年の複線電化による線路切り替えによって、中央線開通時の煉瓦隧道が放棄され、13か所が現存している。(1か所は旧線の営業中に開削されたという)
 そのほとんどが、今から約110年前の明治33年の中央本線開通時の姿を留めており貴重なものである。名古屋からわずかな時間で訪れることが可能なこの 遺構群を何回かに分けて撮影した。今回は定光寺〜古虎駅間に位置する7号、8号トンネルの区間を探索する。

 古虎渓駅


 2009年2月20日

 この日は中央線 古虎渓駅から多治見側にある10号11号トンネルを探索した後、高蔵寺側にある筈の7号8号トンネルを目指す予定でいた。

 この古虎渓駅、名古屋から僅かな時間で訪れることができるにも関わらず、一見して周囲に民家が見当たらず所謂「秘境駅」と捉えられることもままあるが、実際にはニュータウンが近く、利用者数に関しては少なくとも一つ前の定光寺よりはかなり多い。
 
 駅を出て、高蔵寺方面へ進むと、庄内川の対岸に見るからに旧線跡と思われるラインが現れる。

 しかしこの区間、古虎渓の駅を出てから当分の間橋という物がなく直接アクセスする事は出来ない。

 ちなみに現在線はというとこの区間長い愛岐トンネルに入ってしまい古虎渓駅のほんの手前まで顔を出さない。
 唯一旧線跡にアクセス可能と思われるのがこのポイント。

 先に見える赤い橋の先にはゴミ処理施設があるだけで、一般の立ち入りがある場所ではないが、古虎渓〜定光寺間で庄内川の対岸に渡れるのはここだけである。
 橋の手前にはゲートがあるが今日は開いている(まあ自転車であるしあまり関係ないが)

  早速渡ると、黄色い看板には「愛岐処分場専用道路につき、関係車両以外は通行を禁止」とある。

 今日の目的地は、画面右側に写っている親柱と標識の間の先で、看板の手前でもあるしここは勘弁していただきたい…。

 左の広いスペースは間違って入り込んだ車がUターンしやすい為の場所であろうか。

  
それなりに踏み跡のある旧線跡に入ると、すぐに一見して鉄道由来のものと解る擁壁が現れる。

 それよりも、先に何か見えるぞ。

 隧道 

 

 これは…。

 道路から20mも行かない内に現れた7号トンネル。

 この写真ではスケール感が掴みにくいが、要石のサイズから開口部の大きさが想像できるであろうか。

 しかしこの状態。 一度は完全に埋められたものが自然に開口し、それが人為的に広げられたといった感じだが…。

 威圧感ありありの開口部であるが、ここで引き下がるわけにもいくまい。

 5分程躊躇した後、しゃがんで何とか入れるサイズの穴をくぐりいざ内部へ。
 隧道内部にはゴツゴツとした石交じりの土砂が流し込まれているが、残されたスペースは開口部よりもやや広くなんとか中腰で進むことができる。

 しかしこの土砂、どこからきたのであろうか?

 普通に考えれば新トンネル建設の際のズリかとも思うが、それでは工事中に列車が運行できないか…。
 入って10m位の所から、天井がコンクリートで補強されていたが、それを過ぎると再び煉瓦巻きに戻る。

 先を見渡しても当然というか出口は見えず、漆黒の闇が続くばかりだ。

 この先もとりあえず進める感じで、続きが気になる所だが、今日は常光寺側の旧線区間も探索するよ予定であり、この先は後日ということにする。
 五日後の2月26日

 今度はピンポイントで7号〜8号トンネル〜古虎渓駅の区間を攻略すべく定光寺駅を訪れた。

 この定光寺駅周辺は、名古屋の奥座敷とも呼ばれる景勝地であるが、現在駅前の料理旅館は廃業し半焼した無残な姿をさらしており、駅周辺に関しては華やかな雰囲気は無い。
(庄内川を渡った先の定光寺は健在)
 


  

 再び

 今日は定光寺駅先から始まる3号〜6号トンネルを擁する旧線区間を対岸から眺めながら進む。

 この区間は現在有志の団体によって維持、管理されており一般公開も度々行われているようなので、自分が言うのもおかしな話ではあるが、むやみに入り込むのは避けた方が良いかもしれない。

 
 20分程で再びこの場所。

今日もゲートは開いているが、まだ午前7時台といったこともあってか、辺りはひっそりとしている。
 橋の袂に自転車を置き、隧道前へ。

 5日前と変わらない開口部であるがまだ朝日の当たらない隧道からは妖気が噴き出してようである。 
 今日は躊躇せずに内部へ。


入ってから約5分で、後ろを振り返ればもうこんなに入口の明かりが小さい。

 もう引き返す気にはなれない。

 最深部へ

 そうそう、前回の探索後ちょっと調べたのだがこの7号トンネルはこの旧線区間で最も長く、何と全長600m以上あるようである。

 そんな訳で相当な覚悟のいる7号隧道だが未だ状況に際立った変化はないが時折天井の低い個所もあり、そういう所では背負ったザックが煉瓦に触れ煤で汚れてしまう(今でも落ちません)

 入洞から約10分経過、200m位進んだのであろうか

 この様に比較的土砂が少なくスプリングラインの下がはっきり見えているような所もある。

 しかし多数のオーブ(笑)が示す通り埃がひどく空気が悪い。

 その他に狭い、暗い、足元が悪いと4拍子揃った隧道内部である。

 天井部分が変色しているのは蒸気機関の高温の煙で焼かれ続けた跡であろう。 
 マスクでもしてくれば良かったと思いながら、真っ暗な隧道内を中腰で進むと、コウモリの固まる一角を通過。

 この写真を撮った直後、コウモリたちはパニック状態になって狭い洞内を飛び回り、辺りがますます埃っぽくなってしまった。

 せっかく朝になって眠りについた所起こしてしまってスイマセン。

 既に入洞から20分近くが経過しているが、出口は見えてこず、真っ黒にこびりついた煤はその厚みを増しているように思える。

 現場では全く分からなかったが、この写真を見ると足元の土砂までが煤で黒く汚れているように見える。

 天井から剥がれおちた煤のせいであろうか。

 先ほど少し出た、この手前の旧線区間を管理している団体はこの7号隧道も整備する計画もあるようだが、この状況では難しそうである。

 道路からのアクセスだけは良いのだが…。

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