房総の林道走行記
第一回 杉戸林道 2005年4月6日
「杉戸林道」は、千葉県勝浦市の県道177号と国道297号を大多喜町との境界沿いに走る林道である。
情報によると全線ダートで、その距離は約10kmと房総最長らしい。いきなり初回から「最長」に挑むのはどうかとも思うが、駅から比較的近く、アプローチが楽そうで、途中には興味を引く「崩落したトンネル」もあるという。
そんなわけで第一回は「杉戸林道」に挑戦する。
スタート地点は、外房線上総興津駅である。同じ千葉県にあるとは言っても、自宅のある柏から、ここまで行くのは時間も費用もかなりのものだ、千葉せめて船橋に住んでいればと思う。
駅を出るとすぐに国道128号が通っていて、その向こうには雄大な太平洋が広がっている。
しかし俺は海に背を向け、線路を渡り山へと向かう。
12:07
県道177号勝「勝浦上野大多喜線」は、すぐに登り勾配に変り運動不足の脚に堪える。しかし思ったほどは長く続かず、追い風の道は結構楽だった。
途中、「自然水利」を示す手書きの標識を多数見かけたがいずれも実物は発見できず。いったい何処に…。
、県道から戻る方向に登っていく「杉戸林道」の入り口に到着。
ご覧の通り、「一般通行禁止」の看板が立ち、チェーンゲートは閉じられている。しかし轍ははっきりしていて、関係車両の定期的な通行は感じられる。
奥の青い標識によると、この道の正式名称は「広域基幹林道 筒森(杉戸)線」で、その延長は10,566mとのこと、なかなか走り応えがありそうだ。 12:57
走り始めるとすぐに、ご覧のような見るからに舗装工事の準備中といった感じの路面に変る。今にも向こうから工事の車両が現れそうな雰囲気でヒヤヒヤしたが、結局何も行われておらず途中トラックと重機が置かれている場所も通ったが、無人だった。 13:01
工事中の区間が終わるとガレた路面の登りになり、いよいよダートの本領を発揮する。
ダート走行の経験のほとんど無い俺では、大き目の石がゴロゴロする道を一気に登ることは出来ないが、路面状態の良い所を選んで走ることを心がけて走り、次第に慣れることができた。
写真は途中で見かけた 妙見山 参道入り口。「一般通行禁止」のこの場所になぜ…。 13:11
情報によると「眺望は利かない」らしいこの道だが、市の境界沿いに走る道だけあり、意外に景色は良い。
千葉と言うと山のイメージは薄く、実際高い山は無いのだが一歩内陸に足を踏み入れると、意外なほどアップダウンのある道が待っている。 13:12
この分岐を下る方向へ進むと、県道175号「天津小湊夷隅線」沿いにある、赤羽根集落へ抜けられる。
そこにはゲートは無く、車も進入可能とのこと。そこには「鹿除けゲート」なるものがあるそうでちょっと見てみたい気もするが、結構遠いので断念した。
しかしこのすぐ先で実際に鹿を見たので、このあたりには今でも多数生息しているようだ。 13:23
路肩の弱そうな道をガタガタと下りふと振り返ると、そこには錆びた「通行止め」の標識が佇んでいた。
理由の解らないこの標識だが、こんな所で通行止めと言われても困るというものだろう。 13:24
この林道には、写真のような分岐が結構あり、そのすべてが行き止まりのピストン支線らしいが、ちゃんと標識があり迷うことは無い。
今回は時間の都合で走行できなかったが、いずれ支線も訪れてみたいと思う。 13:39
この「第三支線」はご覧のように藪と化していて長い間利用されていないようだ。
しかし全く人が入っていないと言うわけではなさそうで、徒歩でなら結構進めた。山菜取りの需要でもあるのだろうか。 13:48
ほんの少し行った所でこの状況だが、こんな風に元は車が通った道の真中に木が生えるにはどれくらいかかるのだろう。
この先には徒歩でなら楽に越えられる崩落があり、その先も行けそうだったが、行き止まりが分かっているし今回は見送った。 13:50
適度なアップダウンがあり、路面状態も様々なこの道は、走っていて楽しく、寂しさを感じさせることが無い。
しかし何かあっても通る人は無く、慎重に行かなくてはいけないと言うものだろう。 14:06
林道も後半にさしかかると、このように道端に原木が積まれているのを何度か見た。
この日は作業の様子を見ることは無かったが、林道が、本来の意味「林業用作業道」として使われているのは良いことだと思う。 14:14
それを裏付けるように、この先路面状態は格段に良くなり、ご覧のような崩落もすぐに修復されるようだ。
しかしまた舗装工事の準備が行われている雰囲気が漂うようになり、案の定、前方には作業中の小型ユンボが見えてきた。
俺の存在に気づく様子も無いので、横を静かに通り抜けようとしたら、「危ない」と怒られてしまった。
そっちもサイドミラーを見る必要があると思うのだが…。 14:30
そうこうしているうちに、林道はゲートのない終点を迎え、名前の由来である杉戸集落へと抜けた。
しかし、あの崩落したトンネルというのは何処にあったのだろう、結構分かりやすい所らしいのだが。
そうだ、さっきのユンボオヤジの辺りにあったに違いない。しかし戻る気には到底なれないので、反対の入り口側から攻める事にする。 14:35
一度国道297号へ抜け、勝浦方面へ5分ほど進むと目印のガソリンスタンドが見えてきた。水田の中の道を行くと写真のような溜め池沿いに出て、それなりに気分のいい道が続く。 14:45
しかし道は次第に荒れ倒木も増え、跨れない状況が続くようになったので自転車は置き、ここからは徒歩で進む。
本当にこの先にトンネルがあるのか不安だが、方角は正しいはずだ。
14:50
周囲の「煮詰まった」雰囲気が強まると、遂にトンネルは出現した、確かに入り口付近は崩落しており、車での通行は全く不可能だが、徒歩でなら問題無さそうだ。
それなりに距離はありそうだが、出口ははっきりと見えていてそれ程怖さは感じない。
ライトを用意しとりあえず入ってみる。 14:55
この写真は、トンネルの中央付近から入り口側を撮影したものだが、ご覧のとおり完全素掘りのトンネルは、内部も崩落していて相当な状態だ。
しかし幅、高さ共に充分広く、かつては車が通行したことは間違いないだろう。
出口付近は比較的フラットで、自転車でなら問題なさそうだ。
ちなみに、写真では内部が明るく写っているが、実際には真っ暗で、肉眼で辺りの様子を確認することは難しくライト無しでは結構怖いことだろう。
あっけなく反対側へ抜けると、そこはまさにさっきのユンボ親父が作業していた場所で、ガリガリと重機の音が聞こえてきた。
改めてこの写真を見ると、今でも平気で車が通りそうな雰囲気で、内部や反対側の荒れ振りは想像しにくい。しかしよく見ると湧水滴る入り口上部は少し危険な雰囲気で、いつか崩落の日が来るのかもしれない。
またあのオヤジに会う気にはなれないので、そそくさと再びトンネルを抜け、自転車を回収した。 14:58
完全スリックタイヤにドロップハンドルの俺の自転車はいかにもダート向きでは無さそうだが、結構走れたし何よりアプローチの舗装路ではとても有利なので、林道探索にも意外に向いているのかもしれない。
その後、国道297号から、上総中野駅前を経由して上総亀山駅で自転車を分解したが、途中のアップダウンには結構苦しめられた。 17:15