日本縦断西日本編12日目【平成16年4月13日】プラザホテルさんべ(島根県大田市)⇒益田駅(鳥取県益田市)

日本縦断西日本編12日目【平成16年4月13日】プラザホテルさんべ(島根県大田市)⇒益田駅(鳥取県益田市)

今日は約100㎞先の益田まで行き、1708発のスーパーおき5号から新幹線に乗り継ぎ帰る予定になっている。というよりスーパーおき号に乗り遅れると今日中に帰ることができず非常にまずい事になる。

　そんな訳で、まだ夜が開けたばかりだが準備をして早速出発することにする。昨日は途中の山陰本線の駅には全て立ち寄ることが出来たが今日はどうなるかは分からない。

まだ600前だというのにフロントにはキーが何本か置いてあり俺が一番では無いようだ。

市街地を抜け国道に出ると、少しの間は日本のどこにでもある様なショッピングセンターやパチンコ店がある風景が続いた。

　今日最初の駅、静間はそんな景色が終り、水田地帯に入った所にあった。木製のままの引き戸が印象的なこの駅は依託の駅員がいるようで、古い木造駅舎は荒れておらず気分がいい。この先小さな丘を越えると真正面に日本海が広がり、国道と山陰本線は再び海岸沿いを進むようになる。

次の五十猛駅はホーム上に待合室があるのみの駅だが交換設備と側線があり、かつては有人駅だったことを感じさせた。

仁万町に入り平坦な道をしばらく行くと「サンドミュージアム」という、広々とした公園を併設した施設があった。

ここには巨大な一年計の砂時計があるらしいが、残念ながら開館前で見ることはできなかった。

　出発しようとすると、ランニング中のおじさんに声をかけられ「俺も若いころに関西を一周したことがある。ヘコタレないでがんばれよ。」と励まされた。「まさか徒歩で」と思い聞いてみたが自転車で、とのことだった。

木造駅舎の仁万駅に立ち寄った後、国道から離れ「鳴き砂」があるという琴ヶ浜へ向かう。

古い家並みを抜けた先にあった琴ヶ浜は広々とした美しい砂浜だったが、「鳴き砂」かどうかは良くわからなかった。

馬路駅はすぐ近くにあるはずだが、この辺りは狭い路地が入り混んでいて手持ちの1/10万の地図では検討がつかない。

道を聞けそうな人も歩いていないので、勘で路地を入って見たがうまく駅を見つける事ができた。馬路駅に駅舎は無くホーム上に待合室があるだけで、少年が一人列車を待っていた。

　この先国道9号線は未改良の狭いトンネルが連続しスリル満点だが、交通量がそれほどでもないのでまだ救われる。温泉津町に入り、辺りが開けた所に湯里駅はあった。

ここの駅舎は扉やサッシ、内装に至るまですべてが木製のままで内部の出札口なども塞がれずに残り、素晴らしいレトロな雰囲気を醸し出している。

駅前の散りかけた桜と共に、とても印象に残る駅だった。

　文字にすると面白い「温泉津温泉」の下車駅、温泉津駅は、一つ峠を越えた先の深く切れ込んだ入江のほとりにあった。現在改築中で、近いうちに温泉の玄関口にふさわしい立派な駅舎が出来るようだ。

ここで再び国道に戻ってから先を目指しても良いのだが、地図を見ると岬を横断するように進む道がありそこを行くことにする。

ある程度は険しいとは思っていたが、予想以上の急勾配でとても乗る気になれず、林道のような細い道を押して進む。峠を越え、再び海岸に出た辺りに石見福光駅はあった。ここは、かつて有人の大きな駅舎があり利用者も多かったようだが現在では無人化され、こじんまりとした待合室に変わっていた。

しかしこの待合室はよくある味気ないプレハブではなく、石州瓦を乗せた木造のしっかりとした建物で気分が良かった。

　この先国道は平坦で走りやすい道になる。途中、瓦屋根の便所だけを残して駅舎が取り壊された黒松駅、信用金庫と同居していて賑やかな浅里駅に立ち寄り先を目指す。

中国地方一の大河、江の川を渡ると江津の市街地で特急も停車する江津駅に1012、到着。

ここには数年前、列車で来たことがありその時は駅前のビジネスホテルに泊まったが、どうやら今は営業していない様子だ。

江津の市街地を抜けても平坦な道は続き、追い風に吹かれ快走する。石州瓦の立派なトイレがホーム上にあるのに、待合室は簡単な屋根の下にベンチがあるだけの敬川駅を過ぎると、なだらかな海岸線は終り、ややアップダウンのある道に変わる。

次の波子駅は数年前に出来た大きな水族館「石見アクアス」への下車駅で、観光客を意識してか駅舎は改築され周りも整備されている。

普通、無人駅の駅舎が改築されると、プレハブやカプセル型の簡易なものか、今風の洒落たものになるのがほとんどだと思うが、この波子駅は元の駅舎をモデルに木造駅舎を「新築」したらしく異彩を放っている。

線路沿いの細い道をたどった先に山陰本線屈指の小駅、久代駅はあった。ここは周りを林に囲まれた片面ホームの無人駅で、札沼線の豊ヶ岡駅を思わせる雰囲気だ。

　石州瓦の農家が点在する集落を抜け、久しぶりに国道9号に戻るとすぐに浜田市に入った。次の下府駅は浜田の市街地が近いためか、待合室のガラス窓が無いなど荒れていて、余り良い雰囲気ではない。

　この先国道9号は旧来からの道と、市街地を避けるバイパスとに別れるが、道の駅「ゆうひパーク浜田」はバイパス沿いにあるようで自転車では行けないと、この時は思ったがどうやら方法はあったようで少し悔しい。

かつては出雲の終点だった浜田駅に1158、到着。さすがに山陰西部の主要都市の駅だけありタクシーも多く賑やかだ。益田駅まではあと40kmほどで、汽車の時間まではまだ4時間以上あるので恐らく大丈夫だと思うが、アクシデントもありうるのでここからは時計を気にしながらペースを上げて走ることにする。

浜田の市街地を抜けると国道9号は日本海沿いの道になる。山陰本線も併走するが、この先益田までは、ほとんどの区間で国道よりも海側を通っており、全国でも有数の車窓を楽しめる。

従って国道からは余り海は見えないが、ピンポイントで絶景に接することは出来る。

　木造駅舎の周布駅に立ち寄り、国道9号をしばらく進み短いトンネルを抜けた所が、雑誌などで良く見る列車の撮影ポイントだった。

トンネルから出た列車が澄んだ日本海の波打ち際を走るいかにも絵になる所だが、現在ここ通る列車の多くがキハ120単行なのは残念だ。

　浜田から3つ目の折居駅もホームから海を望む、なかなかのロケーションだ。

地元の人で物産店が賑わう道の駅「ゆうひパーク三隅」で妙なキャラクターのスタンプを押した後、特急停車駅の三保三隅駅へ向かう。

少し内陸に入った所にあるこの駅は、特急が停まるとは思えない静かな駅だ。しかし駅前の町並みは石州瓦を乗せた昔からの建物がほとんどで、実に落ち着いた良い雰囲気を醸し出している。

山陰本線はこの先再び海沿いに出て、波打ち際の景色の良い所を走るのだが、併走する道は無いのでアップダウンのある山の中の県道を行く。

途中で岡見駅へ向かう道の分岐があるはずなのだがどうにも見つからない。植木の手入れをしていたおじさんに道を尋ねたがそれでも良くわからなかったので、時間を考え泣く泣く諦めた。

　昨日、今日と山陰本線の駅には一つ残らす寄ってきたので、とても残念だ。

　次の鎌手駅は国道に面して小さな木造駅舎があり、とても分かりやすかった。すでに益田の街は目の前で、時間も大丈夫そうなので休憩にする。

こういった無人駅では大抵水道は止められているのだが、ここはそうでなく手や顔を洗ってさっぱりすることができた。

益田の一つ手前の石見津田駅に1526、到着。ここには数年前に来たことがある。というよりホームに降りたことがあると言ったほうが正しいのだが。

いまは無きキハ181系「おき」との交換待ちで停車中のキハ58系「石見ライナー」を降りて見た光景は変わっておらず、当時のことが色々と思い出された。

すでに益田の市街地に入っており、交通量も信号も多い道をマイペースで行く。今まで延々と付き合ってきた国道9号と離れると、益田駅まではあっという間だった。

下校の高校生で賑わう駅前で自転車を分解した後、まだ汽車の時間までは30分以上あるので駅前を散策してみたが前回来た、競馬場が健在だった頃と特に変わってはいないようだ。

　定刻通り益田駅に入線したスーパーおき号は、前回米子で見たのと同じ新型車両の2両編成で、席は7割方埋まっているようだったが乗客の多くは益田で降りてしまい、荷物をデッキに置いてからでも悠々と席に着くことができた。

　小郡改め新山口での乗換時間はわずか8分で、行きのサンライズのように遅れるようなことがあると非常に面倒な事になるが、列車は順調に走り無事定刻に新山口に到着した。

ドアが開くと同時にホームに降り改札を抜け、最後の力を振り絞って階段を昇り、ギリギリで最終の東京行のぞみ32号に乗り込む事ができた。

本日の走行距離118.43km 走行時間10.07.31 平均速度11.6km 最高時速50.2km 自宅からの走行距離1301.1km以上(推定)