西武安比奈線  
 西武安比奈線は、西武新宿線南大塚駅から入間川の河川敷までの5km弱の支線である。
  砂利運搬の為に敷かれた貨物線で、列車が走らなくなってから約30年の月日が経つが、運行再開の計画があると言われ、今も休止線扱いの沿線にはレール、架線柱、橋梁などがそのまま残っている。
  南大塚駅の下りホーム横には安比奈線0キロポストが堂々と設置されていて、「休止線」であり、廃線ではないことを実感する。
 
 駅前の道を挟んで安比奈線は建物の間を堂々と進んでいる。
  探索はここから始めたい所だが、余りも目につく場所である。
 
 レールはしっかりと残っており、下草も刈られているので非常に歩き易い所だが、町中過ぎて実に落ち着かない。
 国道を渡り暫く進むと安比奈線は住宅街を行くようになり、線路端は住民の庭の様相を呈しており、色とりどりな花が咲き乱れている。
 
 中にはレールとレールの間まで畑になっていたり、掘り起こした土によって完全にレールが埋もれている所もあったが黙認状態なようだ。
  住宅街を抜けると、線路は水田地帯の築堤の上を進むようになる。
  この辺りは小さな用水路を渡る橋梁が幾つかあり、最初の橋はほんの10mほどの長さだったが前日までの雨によって用水路は濁流と化しており、渡るのは断念した。
  しかし、この辺りは踏み跡はあるものの、季節がら藪が深くどのみち下半身はしっかり濡れる運命だ。
  最初の橋梁を迂回すると、水田の中に結構長いガーター橋が見えてきた。
  今度は下の川の水量は大したことがないようだが、渡るとなると怖そうだ。
 
 しかし橋の袂まで行ってみると、レールが残っている事で安定性が高く渡れそうである。
  また万が一の時にも掴み所が豊富でまず大丈夫と判断して渡った。
  田植えの作業のおじさんに見守られながらというのが気になったが無事対岸に着く事が出来た。
   しかしその先は踏み跡もなく、濡れた藪によってズボンも靴もぐっしょりだ。
  少し行くと細い道との踏切跡に出て、そこで撮影の為に迂回したU氏と合流した。
 
 その先は畑の中にまっすぐ線路が敷かれているが、深い藪に覆われており道路も併走しているので、わざわざ濡れることもないと判断した。
  畑が尽きると安比奈線は、いよいよ雑木林の中を行くようになる。
 
 この辺りは下草もしっかり刈られ、レールがはっきり見えていて、廃線歩きには最適な場所だ、今にも向こうから列車が来そうな雰囲気さえあるが、レールが木の根で持ち上げられたような所もあり、列車が来なくなってからの月日の長さを感じさせる。
  一度林を出て、踏切の跡さえない道を横切ると、再びガーター橋が現れた。下は単なる窪地で普段ならそのまま通れそうな雰囲気だが、今日は雨水がたまって深い水溜まりになっており、渡るのがベストと判断した。
 
 今度はU氏も渡ったが、通りを走る車からは丸見えで少々落ち着かない。
  再び雑木林の中を線路は進む。この辺りもレールがしっかり残っているが、枕木が無いように見える。
  埋まっているのでかとも思うがそんな雰囲気もなく不思議だ。
 
 再び林を抜けると立派な県道の高架によって線路は分断されている。
 
 高架をくぐり、何とか線路へ復帰するが、既に終点近いこの辺りは、不法投棄も多く余りいい雰囲気ではない。
  広々した入間川の河川敷は、オフロード四駆の走行コースになっているようで落ち着かない。
 
 かつて安比奈駅がありヤードが広がっていたと思われる辺りは一面の藪に覆われ、現存すると言われる車止めを発見する事はできなかった。