国道152号未開通(不通)区間 青崩峠 (第二回)   


国道152号はを結ぶ長野県上田市と、静岡県浜松市を結ぶ国道であるが、険しい山岳地帯を縦断するルートをとっており途中、2ヶ所、地蔵峠と青崩峠の未開通区間が存在する。
 今回は長野〜静岡県境に位置する青崩峠を訪れるつもりである。
標高1082mの青崩峠は、長野県側からであれば兵越林道、草木トンネルの迂回ルートへの分岐を過ぎたのち、車道終点から登山道を経て到達できるという。
 車利用であれば、峠まで到達できても当然戻ってこなくてはならないのだが、そこは自転車の利を生かし静岡県側への通り抜けを目指したい。…と企んだのだが、2010年1月の挑戦では、時間の無さと気候の厳しさに敗退し、車道終点までもたどり着けなかった。
 今回は静岡県側から青崩峠に挑む。

 中部天竜


2010年10月14日


 前回の撤退から9ヶ月後、今度は静岡側から青崩峠を目指す。

 本来ならば水窪駅で下車すれば最短なのだが、前回も書いた通り名古屋からの始発で乗り継げる飯田線は中部天竜止まりであり、今回は大分手前からのスタートとなる。

 飯田線が中部天竜駅を出てすぐ渡る天竜川橋梁に歩道が併設されていて、最短距離で佐久間方面へ進むことができるのは知る人ぞ知る所である。
 
佐久間駅の先で飯田線をアンダーパスした国道473号は、豆こぼしトンネルという変わった名前のトンネルを通る。

 坑門右脇にはいかにもな分岐があり、どうやら旧道が存在するようだ。
 トンネル脇から旧道へ繋がる入口は狭い階段となっていて、車道としては完全にその機能を失っているが、特に立ち入りを制限するものは無く、歩道としては現役なようだ。


 もとは2車線あった舗装路も下草に覆われ0.5車線程に狭まっている。
 しばらく天竜川沿いに進んだ旧道は現道に合流すべく山側に進路を変える。

 前を歩いているのは普通の中年女性で、このような廃道じみた所で山仕事以外の人と会うのは非常に珍しい。

 一応歩道はあるものの薄暗いトンネルを避け旧道を歩く住民は結構いるのかもしれない。

 国道152号へ 

 豆こぼしトンネル水窪側坑門。

 こちら側にも立派なレリーフが施されている。

 左側の旧道は妙にきれいだがすぐに車止めがあり4輪は通行止。その先は見てきた通りである。

 ちなみに豆こぼしとは、この辺りの天龍川を豆を満載して下っていた船が転覆してしまったという言い伝えから来たもので、このあたりの天竜川の曲がりくねった急流をさすのだという。

 しかし現在では佐久間ダムの完成により天竜川も穏やかな流れになってしまったのは周知の通りである。
 佐久間から水窪方面へ向かうメインルートは天龍川と水窪川の流れを忠実にトレースする国道152号であるが、今回は古道の「塩の道」とも重なる明光寺峠を経由するルートを行く。

 ちなみに最短なのは佐久間駅付近からすぐに分岐して県道290号に入る北条(ホウジ)峠ルートでこちらも歴史ある古道だが、すでに踏破済みである。
 九十九折りが続く車道に対して「塩の道」はそれを串刺しにするように直線的に登ってゆく。
 
車輌の通行を考慮しない古道は、得てして最短距離で急勾配のルートとなっていることがある。
 古くから往来の多かった土地柄らしく、平地の少ない急峻な地形ながらも途中にはいくつもの集落がある。
 
 写真はよくある資材用モノレールだが、これは二人乗りプラス貨車?付きで本格的的なものだ、しかし方向転換はできそうになく山を下るときは後ろ向きにで進む事になり結構怖そうだ。
 峠を越えると、道はアップダウンを繰り返しながらも除々に下って行き、やがて相月駅先で国道152号の旧道に出る。

 この旧道には島という集落があるようで、しっかり管理されており路線バスも通っている。

 今旧道と書いたが、写真に写っているほかにも「おにぎり」が存在し地図でも赤く塗られてはいないが正式に旧道扱いなのかは不明。

 
 国道152号現道に合流した地点で、水窪川対岸に飯田線の線路が見えるが、この間一髪ぶりはどうだろう。

 崩落地点は土被りの薄い隧道になっているようだが、これだけ崩れれば隧道内部には影響は無いものなのだろうか。

 水窪市街

川沿いの国道を北上し、やがて水窪の市街地に入る。

 「峠の国盗り 綱引き合戦」とは毎年秋に県境の兵越峠で、遠州軍と信州軍が綱引きを行い勝った方が、1m「国境」を自国側に動かし「領土拡大」ができるというイベントであるようだ。
 今までの戦績は総じて信州軍が優勢で信州側に国境が移動したことは無いようだが(最大4m遠州側に移動した)、現状では遠州軍も盛り返し、「国境」は実際の県境と同じ位置にあるようだ。
 青崩峠30分 足神神社20分 とある。

 当然の事ながら車での所要時間を示しているのであるが、ちょっと違和感を感じるのも事実だ。

 この辺りでは車移動が当たり前なのであろうが、距離を表示したほうが分かりやすいとは思う。
 水窪の市街地を抜けると、国道152号には一部狭い所も現れる。

 この辺りでは長野方面へ抜ける唯一の道なのだが、交通量は多くない。
 これは、野猿?

 対岸の民家へ最短距離で渡る為のもののようで、個人で設置したのならば結構大がかりな装置だと思う。

 主塔の間に巻かれているのは交換用のワイヤーであろうか。

 草木トンネル

水窪の街を出てから約1時間、青崩峠への分岐の標識が現れる。

 直進すれば飯田及び三遠南信道とあり、この先は自動車専用道に入ってしまうようにも読み取れるが…。
 再び「塩の道」の立派な道標。

 次は青崩峠と示されており、いよいよ県境も近いか? 
 左上を行くのが草木トンネルへと続く高規格道路で、こちらには林道青崩線の標識がある。

 それよりも、かすかに見える草木トンネル側の標識が青のようだ。

 高速道路に準ずる自動車専用道であれば緑のはずだが。

 ご存知の方も多いと思うが、この草木トンネルは2009年1月に、三遠南信自動車道のルート変更(兵越峠付近の地質が弱いため)によって、一般道に「格下げ」され、自転車、歩行者も通れる歩道付きのトンネルに改修されていたのだ。

 手持ちの地図(2008年度版)では当然自専道として描かれていることもあり、自分はこの時点では草木トンネルが自転車で通れるとは全く思っていなかった。

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