三島隧道
国道410号の君津市、鴨川市の境に位置する君鴨トンネルには、旧道が存在し峠には「三島隧道」が現存するのだが、両側を鉄板で封鎖された状態が知られており、あまり訪れる気もしなかったのであるが、最近ではそんな状況にもやや変化があるようだ。

 廃道へ

 国道410号の旧道分岐点から、林道との重複区間を進むとこの場所。

 左へそのまま進めば林道高山線。フェンスの向こうが三島隧道へと続く道となる。

 一見して、しっかりとした感じのフェンスだが脇が甘い。

 
 現道を眼下に見下ろす旧道を進むと、やがて新三島隧道ならぬ、君鴨トンネルが見えてくる。

 1993年完成のこのトンネルは全長約700mと、その数は全国有数ながら、殆どがごく短いものばかりの房総隧道界にあって異彩を放つ本格山岳トンネルである。
  
 旧道化からは20年弱というこの道だが、熟成は進んでいる。

 草木に侵略されるアスファルト路面は昭和廃道の王道と言える風景か。
 
 現行型と変わらないように見えるガードレールは健在だが、崩落と積もった落ち葉によって道幅は狭まっている。

 そう遠くない昔までここは大型車や観光バスも日夜通行する国道のボトルネックと言える箇所であった。

 三島隧道 

 緩やかに上る道を500m程進むと、高さ2.9m制限の先に、いよいよ見えてくる。

 土被りは少ないようで、隧道上部には稜線が見えている。
 ここまで頑張って道を通したのだから、わざわざ隧道を掘らずとも峠を越えられたのではないか、というのは素人考えか?

 
 苔むした廃車の先に三島隧道。

 知られた通り、ここは鉄板で厳重に封鎖され、侵入は半永久的に不可能。 だと思っていたが…。
 中の様子を全くうかがい知れない程、苔に覆われた廃車だが、雰囲気程は古くないようである。

 隧道前には厚く土砂が積まれ、今見えているのは上半分程か。
 しかし、そのおかげで扁額の観察は容易である。

 その古びた雰囲気からは、初期コンクリート隧道を思わせるが、実際には昭和28年竣工の戦後派であり、一般的な楷書の左書きで三島隧道と掘られている。
 

 秘められた内部

   前述の通り、半永久的だと思っていた鉄板だが隙間が…。

 残念ながら人為的なもののようだが、好奇心には勝てず中を覗き込と、ぬかるんだ路面に内外の高低差を乗り越えるためか脚立が置かれているのが確認できた。
    当然ながら通り抜けは不可であり、鴨川側坑口を確認すべき、一旦戻る。
 緩やかに下る廃道を進み、現道の君鴨トンネルを目指す。

 実のところ三島隧道の鴨川側は一度訪れた事があるのだが、どうやらそちら側も変化があるようだ。
     ここにはどんな標識があったのだろうか?

 この廃道は坑口前の高さ制限以外の標識は残されておらず少々残念。
   
   

 そして

   場所は変わって、君鴨トンネルを抜けて鴨川側へ。


 国道410号から旧道まではトンネル前後の本開通まで一時的に使われた仮設道路も廃道化しながらも残っている。
 仮設道路跡とは物理的に切り離された旧道へ出ると、こちらは苔むしながらも交通皆無という訳ではなく、今も現役のようだ。

 その理由とは?

 ちなみにこの場所、以前自転車で下る途中に転倒したことがあり、あまり良い思い出が無い。

 このような腐ったアスファルトは見た目以上に滑るので注意が必要だ
    旧道を直進すると、そのまま林道横尾線方面へ進むことになりこの事から旧道が今も解放されている。

 ちなみにこの林道横尾線、房総屈指のロングダートであり、以前自転車で通行したことがあるが、なかなかハードな道程であった。
   しかし、その林道横尾線も、2012年10月現在では通行止めになっているなので、こちら側から訪れようとする方は最新の情報を確認していただきたい。
 


 鴨川側

   ひっそりと佇む、三島隧道鴨川側。

 掲げられた通行止めが滑稽なほどの風化ぶりであるが、鉄板封鎖は旧道落ちと同時に行われた訳ではないようであり、看板が設置された当時は簡易なゲート程度の封鎖であったのかもしれない。
  近づいてみると、君津側同様の鉄壁の封鎖が。

  しかし…。
   君津側と同様にボルトが外され、隙間が。

 ちなみにこちら側の隙間の方が大分広い。
    そして、永久とも思われた封鎖の中へ…。

 というほどのやる気は無いので、隙間からの撮影の一枚。

 僅か55mの空間だが、濃厚な闇はその短さを感じさせず、君津側坑口付近にある筈の脚立も確認できない。

 しかしながら、この隙間は前述の通り結構広く、協力者がいれば侵入も不可能ではなく、実際足跡も残されていた。
 
 某氏は既に入ったか…。
   
   これは、2005年撮影の鴨川側坑口。

 この時は、鉄板も真新しい感じで、再び中の様子を拝めるとは思いもよらなかった。