日本縦断東日本編18日目【平成15年10月23日】 ビジネス旅館光栄荘(天塩郡幌延町)⇒ 稚内YH(北海道稚内市)

 起きて窓の外を見ると、かなり強い雨が降っている。こんな日でも休む訳にはいかないのが、分割の旅の辛い所だ。しかし予報では天気は回復に向かうとの事なので、希望は持てる。

  旅館の朝食は、ご飯と味噌汁におかずが少々のごく普通なものだったが、小鉢に塩辛があったのが珍しかった。しかし個人的には熱いご飯と塩辛は結構合うと思う。

 準備をしている間も雨が弱くなることは無く、カッパを着て荷物にカバーをかけ、稚内へ向け745、出発。

 昨日通った北緯40°線を再び越え天塩町のカントリーサインを撮影した後、久しぶりに国道40号に戻る。

 降り続く雨の中、大型車の多い道を進み今日最初の駅、南下沼に830、到着。

 

この駅は国道がすぐ裏を通っているのに、まともな道は通じておらず草むらの踏み跡をたどるか、少し先から周りこんで線路を横断するかしないと到達出来ない。

 板張りホームから少し離れた所にトタンの待合室があるが、扉は壊れ完全に雑草に埋もれている。しかし中には駅ノートがあり、1日2往復しか停まらないこの南下沼駅を訪れる人は少なくないようだ。

 ホームに戻り周囲の様子を撮影していると、この駅にはおよそ似合わないスーパー宗谷が高速で通過していった。

 次の下沼駅までは1.6kmしかなく、すぐに着くと思ったが国道からは直接アクセスすることはできず、かなり豊富側へ進んでから周りこむ形になるので少々時間がかかった。

 貨車駅の周りには数件の民家があるだけだが、駅に至る真っ直ぐな道と広々とした駅前がかつての繁栄を感じさせた。

 駅舎内には周辺の地図が貼ってあり、それによると駅前の道の先には「パンケ沼」があるらしいので行ってみる。

 道は途中からダートになり「パンク」が怖かったが、以外にすぐに到達した。案内によると静かな水面の向こうに雄大な下サロベツ原野の眺めを楽しめるらしいが、この天気では視界も広がらない。

 

 国道に戻るとやがて 豊富町に入る。カントリーサインのイラストは牛が温泉に入っているという、ほのぼのしたものだった。

 

 この辺りは以外にアップダウンのある道だが、追い風が強くペダルは軽い。

 豊富の市街地は新しい建物も多く、あいにくの天気にもかかわらず活気が感じられた。

 平屋の豊富駅を撮影していると、最後の一絞りか一瞬雨足が強くなったが、徐々に小降りになりほっとする。

 コーラのような色の湯が楽しめるという豊富温泉へも行ってみたいが片道10kmはあり、時間的に難しいので今回は諦める。

 国道40号が市街地を抜けると、いよいよサロベツ原野を横断する道道に入る。

 両側に牧場が広がる中をしばらく走り、小さな丘を越えると視界が一気に拡がり広大なサロベツ原野に入る。

 この時期でも、ビジターセンターは営業していて  大昔ここが海だったことや最近笹が増えていて、その対策を講じていることなど勉強になった。

 

外に出て木道を歩いてみたが、他に観光客は一人もおらずとても静かだ。初夏に来れば色々な花も見られたろうが、この時期の秋色の原野も魅力的だと思う。

 再び道道を東へ進み丘を一つ越えると銭函海岸以来、久しぶりの日本海に出る。

 

 この先走る道道106号「稚内天塩線」は好景観路として有名で「ガードレールや電柱の無い道が、利尻富士を望む海岸沿いの原野を貫いている」のだが、今日は残念ながら利尻富士はほとんど雲に隠れたままだ。

 しかし道路以外に人工物が見当たらない風景の中を延々と走り、稚内市のカントリーサインを見つけた時には充分に「ここまで来てよかった」と感じる事ができた。

 

 そろそろ腹も減ってきたが店も無いだろうから、当分昼飯は先だろうなと思いながら走っていると、うまい具合に「こうほねの家」という「ミニ道の駅」の様な施設がポツンと建っていた。

 中には軽食レストランがあり「こうほねうどん」 (\500)というわかめの入ったうどんを食べた。

 しかし「こうほね」とはなんだろう。聞いておけば良かったと後で後悔した。

 このすぐ先で一旦海岸から離れ、宗谷本線と併走することになる道道に入る。

 牛横断注意の標識のある両側に牧場の広がる道を進み、やがて久しぶりに線路が見えてくると1349、勇知駅に到着。

 

 ここは貨車駅になっているが、近くにはAコープがあり集落も大きいので利用者もそれなりにいることだろう。

 次の抜海駅は線路が 日本海に近づく手前の辺りにあるが、古い木造駅舎は周りの家や廃屋の中に溶け込んでいて思わず一度通り過ぎてしまう。

 慌て来た道を戻り到着した抜海駅は、駅舎正面こそ手直しされているが、ホーム側や内部には昔の雰囲気が残っていた。

 ちょうど列車が到着する所でキハ54単行同志の交換風景を眺めていると、突然シャワーの様な強烈な雨が降り出した。

 急いで駅舎に戻り自転車も雪切室に入れたのでほとんど濡れずにすんだが、もし走行中ならば隠れる所もなくずぶ濡れになっただろう。

 
 幸い雨はすぐに止んだので、再び海岸沿いの道に出てノシャップ岬を目指し走り出す。

 この辺りが宗谷本線の車窓のハイライトで低い宗谷丘陵の中を線路はうねる様に進んでいる。


 道道の景色もなかなかだが、今日通った豊富町と稚内市の境辺りの雄大さには及ばないと思う。

 宗谷本線は全体的に余り景色の良い所を走っていない気がするが観光のために建設したのでは無いのだから当然だろうし、その中で一瞬の素晴らしい景色を見つけるのが鉄道旅行の醍醐味なのだろう。

 天気はかなり回復して薄日も差してきた。この調子で行けば、ノシャップ岬から夕日を眺められるかもしれない。そう思うと足が少し軽くなる気がした。

 稚内の市街地へ向かう道が分かれると、周りに民家も増えてくる。またこの辺りには北海道独特(だと思う。)「鈴木宅前」のような個人名のついたバス停が多くて面白い。

 日没まではまだ時間がありそうなので、岬の少し手前にある日本最北の温泉、「稚内温泉童夢」に立ち寄る。

 稚内市民とそれ以外で料金に差があるのが北海道内の同様の施設と違う所だったが設備は新しくきれいで、ゆっくりという訳にはいかないが、日本海が一望できる温泉を楽しめた。

 
さあノシャップ岬は目の前だ。徐々に大きくなる夕日を見て走り1620、ついに到着。

 すっかり整備されてはいるが木製の看板は昔と変わらないノシャップ岬には、おじさんが一人いたので、かすかにサハリンを望む雄大な夕日をバックに写真を撮ってもらった。

 
 おじさんは東京から仕事で来たらしく、川越のことも良く知っていて日本は狭いなと思った。


 これから完全に暗くなる前に、稚内駅に着いて写真を撮りたいので海岸沿いの市街地を急ぐ。

 日本最北の駅、稚内に1650、到着。いままで数えきれないほどの駅に立ち寄ってきて、これが最後の駅だが不思議と実感が湧かなかった。

 

 駅舎は昔のままだが貨物も客車列車も無くなった今、構内には行き止まりの線路が2本あるだけで寂しい感じだ。

 かつて樺太への連絡線の乗り場だったという利礼ドームを見学した後、すっかり暗くなった道を今日泊まる稚内YHへと急いだ。


 
本日の走行距離112.93km 走行時間10.42.35 平均速度10.5km 自宅からの走行距離1891.82km以上(推定)