日本縦断西日本編9日目【平成16年2月20日】西村屋旅館〈兵庫県豊岡市〉⇒ビジネスホテルいわた〈鳥取県鳥取市〉

 西村屋旅館は、実に「駅前旅館」らしい所だ。電話をしても向こうからは名乗らず、部屋に鍵はなく単なるビジネスホテルの和室版ではない味のある所を存分に見せてくれた。

 また、やけに広い部屋と自宅と同じ様なせんべい布団があるのも駅前旅館の魅力で昨日も良く眠ることができた。

 女将の見送りを受け713、鳥取を目指して出発。

 今日は、まず温泉地の城崎まで行き日本海に出た後海岸線沿いに鳥取まで行く予定だが、距離は80kmほどで夕方には楽に着くだろうとこの時点では考えていたのだが…。

 城崎へ向かう円山川沿いの県道は平坦で走りやすく、朝もやのかかった辺りの風景はなかなか幻想的だ。 

 

渡し船で対岸にある玄武洞に渡る事ができるらしい玄武洞駅に758、到着。ちょうど出雲号が通過するところで、早くも一昨日の出雲に乗った俺が、昨日発の出雲に抜かれてしまった。明日も鳥取の先あたりで再び、今日発の出雲に抜かれることだろう。

 県道が円山川から少し離れた所に、城崎駅はあった。さすがに有名温泉地らしく、朝だというのに駅周辺は浴衣を着た温泉客でにぎやかだ。

 城崎には六ヶ所の外湯がありその内、四ヶ所が開いているようだったが駅に近い所は騒がしそうなので避け温泉街の外れにある「鴻の湯」にする。

 
  予想通り、鴻の湯は地元の人らしい客が数人いる程度で落ち着いて湯に浸かることができた。

 駅前には、温泉が噴水のように湧いていてコップがあり湯を飲めるようになっている所があったので試してみたが、塩気がきいていて飲みずらく、しかも後で腹が痛くなってしまい失敗だった。

 800過ぎから一時間ほど城崎に滞在したので出発しようと思うが、ここから竹野へのルートは、すぐに右折して鋳物師戻峠を経由するものと、川沿いに直進して河口まで行き海岸線をたどる二つがある。

 距離的には峠のルートのほうが短く鋳物師戻というネーミングにも惹かれるものがあるが結局、景色の良さそうな、海岸線沿いのルートを行く。

 円山川の河口までは平坦な道で、追い風にも扇られあっという間に到着。しかし、ここから急な登りが始まる。

 この辺りは、入り組んだ海岸線になっていていくらかはアップダウンがあるものと思っていたが想像以上の険しさで、竹野町との境にある展望台から見える河口付近の家々の屋根は豆粒のようだ。

 
 なんとか押さずに峠を越え、カーブの連続する道を下ると入江に広がる集落が見えてくる。

 「やっと竹野に着いたか」と思ったが、どうも違うようだ。地図を確認するとここは城崎と竹野の中間位にある宇日という所で、もう一つ峠を越えないと竹野にはたどり着けないようだ。

 こういう予想外の登りはどうも気力が湧かない。日本海の眺めが良い道をほとんど押して登りどうにか峠を越え、再びカーブの多い道を下ると、今度こそ本当に竹野に1045、到着。

 竹野駅は、観光地とは思えない静かな所だった。平屋の木造駅舎は昔のままで、どこにもJRと表記されていないのも気に入った。

 県道に戻り再び海岸線に出ると少しの間は地図にある通りの「眺めの良い快走路」だったが、すぐに登りになった。峠を越え少し内陸に入ると昨日の木津温泉駅と同じく、旅館の迎えの車で賑わう佐津駅に1146、到着。

 駅の時刻表を見るとあと数分で臨時列車が到着するようで、そうすれば駅前の車も居なくなるはずなので、それまで待つことにする。

 やがて、キハ58系改造のジョイフルトレインを使用した列車が到着。

 ドアが開くと中年男性のグループがゾロゾロと降り始めたがどうも酔っ払っている人もいるようで、全員降りるまでにはかなり時間が掛かり列車はなかなか発車できずにいる。

 おじさん達は貸切りバスと勘違いしているのかもしれないが時刻表にも乗っている臨時列車でほかの乗客もいるはずなので、ちょっと迷惑だと思う。

 おじさん達は列車を降りても相変わらずふざけあったりしていて、全員車に乗るまでに再び時間が掛かった。

 旅館の車が去り、静かになったので駅舎を撮影したが竹野と同じくJRの表記がなく落ち着いた雰囲気の良い駅だった。

 この先、海沿いの道は国道178号になるが相変わらずアップダウンを繰り返すタフな道で体力を使う。短いトンネルを抜け柴山駅に1245、到着。

 
 ここは、近くに温泉があるというのにそんな雰囲気は全くしない所だ。駅舎もホーム側の壁が取り壊され柱だけになっていて哀れだ。

 特急停車駅の香住との間も山陰本線はトンネルで山を貫いて最短距離で到着するが国道は海沿いの険しいが、しかし景色はいい道になっている

 山陰本線の城崎→鳥取間はほとんど県道、国道よりも山側を通っていてトンネルも多いのでほとんど海が見えず、道路の方が圧倒的に景色がいいが、この先の出雲市以西は山陰本線の方が海側を通っていて、日本海の眺めを満喫できる。

 カニで有名な香住駅前は、シーズンらしく観光客で賑わっている。しかし昨日から道路沿いに数えきれないほどカニの販売所を見たが、養殖できないカニをそんなに捕って大丈夫かと心配になってしまう。

 地図を見ると、次の鎧駅は国道よりも遥かに低い入江の集落にあるようで寄るか迷うが結局立ち寄った。鎧駅は駅舎こそコンクリート製の簡易な物だがホームからは日本海が見渡せて、なかなかのロケーションだ。帰りも、ほとんど押したにもかかわらず10分ほどで国道へ戻ることができた。

 

 この辺りから道は下りになり、平地に出て視界が開けると餘部橋梁が正面に見えてくる。餘部橋梁は列車では何度か通ったことがあるが、こうして離れた所から全体を見るのは初めてだ。

 餘部駅は橋梁の浜坂側すぐ手前にあるが道路の道案内は何故か民家の軒先を通って登り口まで行くようになっていた。ここに自転車を置いて急な山道を登る。

 5分ほどで片面ホームと小さな待合室がある駅に到着するとちょうど列車が来るようで、兄ちゃんが一人カメラを構えていた。

 やって来た列車は国鉄色のキハ58、28とキハ47が2両の4両編成だった。キハ58系は最近まで鳥取⇔米子間の快速に主に使われていたもので新車導入で引退したが、人気のある車両なのでこの辺りで使われているのだろう。

 駅を撮影して自転車の所まで戻ると立小便をしていたおじさんに「今夜は野宿か」と聞かれた。冬は出来ない。と答えると「この先の峠を超えると浜坂はすぐだ」と教えてくれた。

 その桃観峠は勾配はそれほどでもなかったが、腹が減ってきたこともありかなり押し長いトンネルを抜けどうにか1450、浜坂町に入る。



 峠を下った所にあったスーパーに立ち寄り遅い昼食を食べたこともあり、駅前にカニや海産物の直売所やお土産屋が立ち並ぶ浜坂駅に着いた頃にはだいぶ体力が回復した。

 次の諸寄駅は国道から集落の中の細い道を入り込んだ所にありたどり着くのに手間どったが、こじんまりした木造駅舎があり駅からは漁港が一望できて気分がいい。

 この先国道は再び海沿いを走るようになる。短いトンネルをいくつも抜け、居組駅への県道の分岐点に着く。

 居組駅は、一本道をかなり山道に入った所にあり、古い木造駅舎があるらしく寄ってみたいのだが時間の事を考え断念する。

 ここからは、兵庫県と鳥取県の境界で陸上(くがみ)七坂、別名七坂八峠と呼ばれる所でまさか峠が八箇所あるなんてことはないだろうがいかにも険しそうな名前だ。

 九十九折りの登りは結構キツかったが景色もよく押さずに峠を越え1630、鳥取県に入る。

 

 鳥取県内最初の駅東浜の手前辺りからようやく平坦になった道を、なんとか日暮れまでに鳥取砂丘にたどり着こうと少しペースを上げ、走る。

 高校生で賑やかな大きめの木造駅舎がある岩美駅の少し先には、北海道と茨城、埼玉の一部にしかないと思っていたセイコーマートがあって驚いた。

  スポーツドリンクを買い、走り出すとすぐに丹波町で別れて以来久しぶりの国道9号と合流する。

 さすがに交通量の多い道を進み、片面ホームと待合室だけの大岩駅を過ぎ小さな峠を越え福部村に入ると国道9号と別れ、県道鳥取砂丘細川線を走ようになる。

 やがて風景は独特の匂いが漂う一面のらっきょう畑から、防砂林の松並木に変わりいよいよ鳥取砂丘に入ったようだ。

 沈む夕日を追いかけるようにして走りなんとか日没前の1750、砂丘全体が一望できる高台に到着。



 夕暮れの鳥取砂丘は観光客もまばらで、落ち着た雰囲気が良い。うまい具合にいたおじさんに写真を撮ってもらい、鳥取駅へ向け走り出した。

 鳥取の市街地に入る頃には完全に日が暮れていたが、ここまで来ればなんとかなるだろう。

 駅周辺の道は以外に複雑で思ったよりも時間が掛かったが、ついに1844、鳥取駅に到着。

 泊まろうと考えていた旅館に電話をしたが満室とのこと。仕方なくあまり泊りたくはないビジネスホテルだが、税込\3800と安い「ビジネスホテルいわた」にした。

 駅前の食堂でゴハンのおかずが焼きウドンという、以外にありそうで無い定食を食べ宿に向かう。

 駅からは結構遠く値段なりの所だったが、ちゃんと寝れる所なら別に構わないというものだ。

 本日の走行距離、105.38km以上 走行時間11.14.15 最高時速44.2km 自宅からの走行距離965.41km以上(推定)