奥米隧道と奥米台隧道旧道(前編)

 君津市南部 三島ダム近くに存在する奥米隧道はその独特な雰囲気と比較的アクセスしやすい立地から、数ある房総の隧道の中でも良く知られた存在である。

 自分としては2008年に一度訪れたことがあるが、2012年10月末及び11月初旬に再訪して再探索を行った。

 また、1km程先にある奥米台隧道には旧道が存在することを確認しており、こちらの踏破も目指したい。

 上総松丘

 2012年10月末

今回の探索のスタートは久留里線、上総松丘駅となる

 目的地の奥米隧道一帯とは特に近いという訳でもないが、車を持たない自分には此処までするのが輪行が最速にして唯一の到達手段である。

 タブレットの扱いが終了して久しい久留里線だが、キハ30 37 38の国鉄型気動車はいまだ健在、しかしながらこのリバイバルカラーが示す通り後継のキハ130に切り替わる日は近い。

 上総松丘駅周辺の国道410号は、一度久留里線と並行て亀山方面へ進んでからループする形で西へ戻り鴨川方面へ進むという大変妙な線形となっているが、今日はそれには付き合わず、ショートカットして直接鴨川方面へ。

 5km程進みこの大岩隧道で房総スカイラインの下をくぐれば目的地は近い。
  
 ここは右の三島湖方面へ。

 ちなみに右の木更津方面は国道465号へと続いているのだが、この場所は国道410号との重複区間、進むべき三島湖方面は直進するバイパスの旧道となるが、今でも国道指定されたままのようである。

 つまりこの三方向どこへ進んでも国道410号ということか。
 三島ダム周辺はキャンプ場などもある清和県民の森の一部となっており、奥米隧道のある「林道渕ヶ沢奥米線」もここから始まるが、しばらくは普通の舗装路が続き民家も点在する。

 三島ダム 

 この場所を訪れた「その手の人」は皆気になるであろう、一コマ前の看板奥にある隧道。

 「この先行き止まりにつき通り抜けできません」

 とあるが…。
 
 結論から言うと、この隧道は、もう一本素掘り隧道を抜けた先の湖畔にある数件の民家の為にあるもので、看板通りその先へ進むことはできないようだ。

 しかし、、直角カーブあり、二本目には内部には湖畔への分岐ありと実にインパクトのある隧道なので、徒歩及び自転車でなら覗いてみても損はないと思う。
 「自然越流式」というらしい淵から水のあふれ出す様子を見ながら、堤体道路を進むとバイパスと合流する国道旧道が分かれて行き、正式な林道の起点となる。
 元国民宿舎だった建物を過ぎると、奥米地区は近い。

 この「国民宿舎清和」は2008年に訪れた際は営業していたが、2009年3月末で閉鎖したようだ。

 近くにメジャーな観光地がある訳でもなくなかなか苦しそうな立地ではある。

 自分のような探索者には魅力的な場所だが…
    釣りボートの小屋を見ながら進むと、「奥米橋」

 1953年竣工のポニートラス橋とその後に続く桁橋で構成されている。。
 
 ポニートラスというと古い小規模な鉄道橋のイメージがあるが、そういえば国道418号通行止め区間の八百津側すぐ手前にもこんな橋があったような。

 隧道へ

 堂々とした銘盤

 昭和28年(1953)

 千葉懸建造

 内示(昭和14年)二等橋

 制作 ●●橋梁製作所 (判別できず)

 この二等橋というのは9tまで通行可能な府県道橋という区分になるようだが、この道路は今でも林道である。

 さて、これが奥米隧道。

 立派な坑門と扁額を有するその造りは、素掘りが一般的な房総の林道隧道とは一線を画するもの。

 坑門付近は覆工がなされているが、中央部分は素掘りのようだ。

 長さは目算で100m程か。

 しかしながら、これだけではなぜこの隧道が有名なのか知ることはできない。
   扁額のアップ。

 頭文字が欠落しているが、ここは「奥米隧道」で間違い無い。

 「隧」の字が現在の一般的な表記と異なるが、よほど最近の扁額以外は殆どがこの字となっており間違いでは無い模様。
 
 右に見えるにが今出てきた奥米隧道、では左は表題にもある奥米台隧道かというとそうではなく、こちらも奥米隧道である。

??な方もいるかもしれないが、左右の隧道は元々一本だったものが昭和40年台に崩れ、2本に分ける工事が行われ、現在に至るというのが真相なようだ。

 確かに良く見れば君津側の立派な坑門に対して右の坑口はいかにも歪な形であるし、右の坑門も薄っぺらで取ってつけたようにも見え、さらに隧道高さだけの法面も違和感ありあり。

 
   さて奥米隧道が本領?を発揮するのはこれから向かう鴨川側の方であり、長さもこちらの方が倍程ある上途中にはある特異点も…。

 後付けのポータルを見ながらいよいよ内部へ。
 奥米隧道第二ラウンド。

 こちらも入ってすぐの所は覆工が為されているが、程なくして素掘りとなる。

 途中でカーブしており出口は見渡せない。
 100m足らずで左側に横穴が!

 この画像ではスケール感が伝わらないが、高さは1m程しかなく這いつくばらないと奥を確認することは出来ない。

 
   覗きこんでみると。

 左側の外には三島湖がある筈で、水抜きの横穴とも思うが、現在ではゴミ混じりの泥で埋まっており、詳細は不明。

汚れてもいい服、手袋 ヘルメットがあればとも思うが…

ここは勘弁してください…。

 横穴2

 程なくして、再び左側に横穴!

 こちらは大人が立って入れる程度の高さはあるが、すぐ先で水没していおり、いかにも陰鬱な雰囲気である。

   
   横穴は入って5m程から水没が始まっているが、手前には水抜き目的を裏付けるように溝が掘られている。

 しかしながら見ての通り現在では泥や雑多なゴミで埋もれてしまいその用をなしていない。

 このゴミがまた入水への抵抗感を増す一因となっているのだが。
 

 ちなみにこの隧道、平日でも5分に1台程度の交通量があり思ったよりも安心して観察できない。

 こんな横穴へ入る姿を見られるのは避けたいもの。

 車が来ないのを見計らって突入し、手前から観察する限り水深もそれ程深くないようなので意を決してGO。

 
 水深はひざ下程度で大したことは無かったが、時折泥が深く、足を取られる。

 本坑から見た雰囲気はゴミの浮く泥水といった感じだった坑内水だが、実際入ってみれば動きの少ない地下水は非常に澄んでいる。

 程なくして出口が見えてくるが、なにやら不穏な雰囲気である。
 
しかしながら一歩けば澄んだ水も巻き上げた泥であっという間に濁ってしまう。

 この横穴が水抜き用であれば、外へ向かって下り勾配で掘ってある筈で、進む程に水深がアップすることが予想される。

 まあ出口も近いのでそんなに急激に深くなることはないだろうが…。

 振り返れば本坑の明かりがぼんやりと見える。

 こんな場所の心細さは相当なものだが、ここで引き返す訳にも行くまい。

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