国道303号旧道八草峠旧道  第二回     


 岐阜県岐阜市と福井県若狭町を結ぶ国道303号であるが、岐阜〜滋賀の県境に位置する八草峠は、2001年に3025mの八草トンネルを含むバイパスが開通するまでは断崖の狭路が続く難所として名高かったという。
 旧道化後数年はなんとか四輪でも通過出来る状態が維持されていたようだが10年近くが経過した今、各所で崩落が発生し通年通行止めの状態が続いているようである。
 

 旧道 その先

 旧ゲート付近の杉の植林地は早々に終わり、その先はいかにも人が入っていなそうな苔むしたアスファルトの登りが続く。

 このような路面状態は、比較的グリップの効く登りはまだ良いが、下りは非常によく滑り特に雨の後などは最悪である。

 
 やがて視界が開けてくると日当たりも良くなり、多少荒れてはいても乾いた走り易い路面になる。
 
 あれ?

 見るからに最近舗装し直されたと思われるアスファルト路面。

 旧道入口のゲートの感じから見て、少なくとも滋賀県側は放置状態を想像していただけに意外である。
 唐突に現れた通行止め。
 
 こちら側(滋賀県側)に向けてたてられており、その意図は想像しかねるところだ。
 

 復旧工事 

 さらに行くと、右後方の分岐から多数の轍が現れ、峠方向へ向かって行くようであった。

 地図をよく見ると、この分岐は金居原集落の先で国道から別れた林道?で、ここまでの旧国道の代わりに工事用道路として使われているようだ。

 
 それならばこの先も暫くは安泰かと思った矢先、行く手を遮る大きなユンボ。

 昼休みの時間ということか幸い辺りには誰もおらず、脇を失礼させていただいたが、実際工事が行われて居れば通行は困難であったであろう。

 こっ、これは。

 ユンボの先は補修の終わった道になるが、なんともスパルタンな道である。

 断崖の路肩に立てられた妙に背の高いデリネータは間隔が5m位あり、車輌の転落阻止に役立たないことは言うまでも無い。
  
 その先は整備途中の道となるが、ガードレールが設置されそうな雰囲気は無い.

 途中に何かある訳でも無く、利用価値の低そうなこの旧道であるが、道幅は狭いままながらも保守は続いているようだ。
 工事個所も終わったようで、資材が道の片隅に積み上げられている。

 こういった工事は峠から始めることも多いようだが、まだ峠は先にのはずだ。

 道が無い

  薄く雲の掛かる山は先日訪れたばかりの金糞岳か。 
 かつては容易に人を寄せ付けなかった山深い滋賀県第二鋒だが、鳥越林道の開通によって自家用車を使えばわずか片道1時間程で山頂を踏めるようになっている。
 !
     
 道が、無い…

 それまでは特に通行に支障があるような障害は無かった旧国道だが、突如として20m程に亘って道が完全に消滅している。

 路肩側の法面は特に崩れた様子も無く、道だけがスプーンで掬い取ったようにきれいに無くなっているのはいかにも不自然だが、とにかくこれはまともに通ることは出来ない。
 さて、どうしようといった所だが当然すんなりと諦める訳もない。

 
 山側の斜面を高巻きして反対側を目指す。

 急斜面かつ高密度の灌木帯は自分だけなら何とかなっても、自転車を通すのは容易では無い。

 ここは残念ながら留守番していただくことにした。

 峠到達しかし…

 しばらくの斜面と籔との格闘の末、何とか「対岸」へ
 
 しかし自転車はあちら側へ置き去り…。

 崩落個所をよく見れば、地道に修復しようとはしているようであり、いつかは再び普通に通れるようにはなるのであろう。
 
 道路「消滅個所」の向こうは当然というべきかひどく荒れていて、全く車輌が通行したような形跡は無い。

 路面上を好き放題み水が流れ、両側から雑草の侵略を受ける旧国道は既に廃道同然だ。
 10分程てくてくと徒歩で進むと、通行止の看板が現れた。

 冬季の豪雪ぶりを想像させるひしゃげた看板だが、こちらへ向けて通行止めが現れたということは、当時はあの「道消滅個所」もなかったのであろう。
 すぐに、立派な石碑の建つ八草峠へ。
 
 やったー
 八草峠制覇…。

 しかし当然単身でこの先へ進む訳にもいかず、不思議なほど達成感が無い。
 さてこの先どうしようか…。

 自転車まで戻って来た道を下ってトンネル抜けるか。
 でもユンボの所はもう工事再開してるだろうし、旧道入口の腐ったアスファルトも憂鬱だ…。

 
 答えはもはや一つしか無いであろう。

 足早に来た道を戻り「現場」へ復帰し、気付いた時には自転車ごと急斜面に挑んでは滑り落ちを繰り返していた。

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