国道157号(能郷〜黒津〜大河原〜温見峠その1)

 国道157号は石川県金沢市から、岐阜県岐阜市に至る国道であるが、福井〜岐阜県境の標高1000mを越える温見峠を中心とした70km弱の区間は、未整備な挟路が続く所謂「酷道」として知られている。(福井県側では現在進行形で大幅な改良が行われている地点も多い)
 その中でも岐阜県側の冬季閉鎖区間の始まりである本巣市能郷〜黒津間約6kmは「落ちたら死ぬ」というキーワードで知られる通り、ガードレールのない断崖の挟路が続き、特に名高い存在である。
しかし、その険しさゆえゲートが開いている事は稀で、最近では崩落により完全通行止めの状態が続いている。

 2010年5月末ここを訪れた。

 本巣市能郷

 前述の通り、能郷〜黒津間で長期通行止が続く国道157号ではあるが、これによって福井県側へ抜けることが不可能という訳では無く、迂回路は用意されている。
 
しかし、その迂回路は距離が大幅に伸びる上、アップダウンの激しい峠道のようで自転車では相当苦労しそうである。
 (車でなら断崖を避けられるためむしろ走りやすいというが)

 というわけで、なんとか通行止区間を通過したい所だが如何せん復旧工事が現実に行われているようで、少々の崩落ならば気合で乗り越えることが可能でも、こればかりは突破不能である。
 
というわけで、現在時刻午前5時37分
 前夜からの殆ど徹夜の走行が功を奏して、おそらく工事の準備も始まってないであろうこの時間に能郷集落の外れまで来る事ができた。

 写真の看板は大型車の回転が50km以上も先の大野市巣原まで不可能だとしているが、現実には工事用のダンプなどの通行はありそうだ。
 

 最後の民家の手前に立つ通行止の標識と古びた「おにぎり」。
 
 ここから県境を越えた遥か先にある福井県大野市の真名川ダムの先まで、年間を通して定住する人は現状いないようで、約70kmの事実上の無人地帯が続くのである。

 最奥の民家を過ぎてから5分も掛からずに能郷ゲートに到達。
 いままで数多くの閉じられたゲートを見てきたが、これはその中でも有数のものものしい警告ぶりである。

 少し前までは崩落地点のものと思われる写真の付いた看板もあったようだが今日は見当たらない。
 
 それよりも、脇に目を遣れば…。

 落ちたら死ぬ その先 


 危険 落ちたら死ぬ!!

 これが、かの有名な看板である。この辺りを紹介したブログなどは多数あるが、その多くはこの看板を見て満足して引き返すか迂回路へと回るのだが…。
 
 隣の看板には工事期間が5月31日までとなっているが、それが過ぎれば通れるようになるという訳では無いと思うが。
 しつこく表示される大型車通行不能。
 
下には「小型車のみ通行可」とある。小型車というとなんだか自分は軽自動車などをイメージしたが、法律的には大型車以外の車はすべて小型車に分類されるようだ。
ゲート前後だけは整備されていたこの区間だが、数百mも行かないうちに、いきなり険しい断崖の挟路となる。

 これが林道であれば特に普通の道としか思えないが、ここは紛れもない国道157号。
 樹木に隠されてはいるが、一歩道を踏み外せば西谷川の深い谷底まで一直線。  

 当然助からないであろう。

 「落ちたら死ぬ」は単なる脅しでは無い。

 酷道の真実

 未整備な挟路の続くこの区間だが、比較的新しそうなロックシェードが一か所設けられている。
  
 最低限の整備、補修しか行われていないイメージもあるこの辺りだが、そこは国道。地道な改良は進んでいるようだ。
「この先、転落事故現場 スピード落とせ!」

こんな所でスピードなんてだ出さねえ(出せない)よ!という声が聞こえてきそうだが、地元の車は結構なスピードで走っているような気もする。
 国道157号のこの「酷道」区間だが、狭くガードレールが無い崖っぷちの道なのが難所である理由なのは当然だが、それに加えて細かいカーブが数えきれないほど連続しており対向車の存在がぎりぎりまで確認できないのが、それに拍車をかけている。
 こんな所でバックして対向車に道を譲るなど、想像しただけでも恐ろしい。

 しかし自転車では対向車の問題とは全く無縁で、この谷沿いに水平に付けられたアップダウンの少ない道はむしろ走りやすいのが現実だ。
 ポツンとある、この辺りでは珍しい存在のガードレール。

 貴重なガードレールだが、後ろが少し広くなっている上に樹木に守られそう簡単には転落しそうにはない所にあるのが悲しい。

 後ろのおにぎりは国道指定当時からのものか?

 現場

 ゲート区間に入ってから約30分。
 
 100m程先に一台の軽トラ発見。
 「車が停まっている=人がこの先にいる」ではないのは今までの経験で解ってはいるが、この先に現場があるのは間違い無く、事実すぐ先に300m先工事中の看板を見つけた。
ついに…

 午前6時16分 大崩落現場へと到着。
 雑然と置かれた資材の先には荒々しく削れた岩肌が露わになっている。
これは、行けるかも…。

道を埋め尽くしていた大量の土砂はほぼ撤去され、元々の路面が姿を現している。

 小型ユンボの隣には落石注意の標識も健在で、どうやらこの崩落はより復旧の困難な凹型ではなく、道路自体は崩れていない凸型であったようだ。
 さらに近づいてみるとこの様子。

 どうやら工事の人は居ないようではあるが、まだ緊張は解けない。作業はまだまだ続きそうで、入口の看板にあった5月31日に作業終了はありえないであろう。

 対岸の道は地図に無いが、どこへ通じているのであろうか?

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