静岡県道288号(佐久間ダム側2)  
 

静岡県道288号大嵐佐久間線 廃道界ではその名は良く知られた存在であろう。ネット上を探してみると、少数の全区間踏破記録を見つける事ができるが、かなり前の記録では「登山経験必須、命の危険、必ず複数人で一日ががりで」といった感じだったのが比較的最近のものではそんな状況もやや変化しているようだ。
 しかし自分の中では完全に放棄された、禁断の廃道といったイメージが強くここは一つ自分の目で確かめて見たい。

 現在ではその全線が静岡県浜松市天竜区に属する静岡県道288号大嵐佐久間線だが、かつては北側が水窪町、南側が佐久間町と別れていた。しかしここまで市の名前とイメージが合わない場所も珍しいであろう。
 地図を見ると分かるように天竜川の対岸の愛知県豊根村(ここも数年前まで「日本一のミニ村」富山村、豊根村と別れていた)にはそれなりに整備された県道1号が通っており、沿線に分岐も集落も無い状況では県道288号が廃道化するのは致し方ないようにも思える。

 A地点

 佐久間ダム側ゲートから約8km続いた車両通行可能区間が終わると、いよいよお待ちかねの廃道区間に入る。

 前回引き返した大崩落地点までは5km以上あると思われ、徒歩での往復にはそれなりの時間と体力を要しそうだ。しかしそこまでに別の決定的な場面が現れて撤退となる可能性も当然あるということだ。
 自転車を置いた地点から約15分。見るからに大規模な崩落に遭遇する。
 ここは2004年に全区間踏破したというレポでは「最大の難所」とされていた所で、少々手強そうだ。
 
 しかし大分年月を経た崩落らしく杉が植林?されている様子も伺え、その辺りに攻略のカギもありそうだ。
 
 この場所を一言で表すと「面倒」。
 上へ上へと安定した場所を辿って行けば、それほど危険を感じることなく通過できるが、登った分は降りなくてはならず、どうしても時間がかかる。
 
ただ、中間地点のこの土石流の跡のような所だけは手掛かりが乏しく慎重さ要求される。


 反対側から振り返って見ると、この地点は約50m程に渡ってすっかり道が埋もれている。
 
現在では風化が進み、大分落ち着いた状況となっているが発生した当初は今よりもずっと難易度が高かったものと思われる。

B〜E地点
 先ほどの崩落をクリアしてから約5分後、否応なしに目立つ黄色い物置を発見。
 扉は最初から全開になっており、怖々中を覗き込んだが幸いというか何も入っていなかった。
 林業作業に関係するものだとは思うが、頑丈そうな鍵が2つも付いており、一体何が隠してあったのであろうか。
 謎の物置から約8分後、2番目の橋、境橋に差し掛かる。
 古びてはいるが親柱は健在で、先ほどの山室橋と同じく昭和33年竣工と記されている。橋の手前にガードレール等が一切無いのは当初からの仕様であろうか。仮にもここは県道で、あちらはさらに格上の国道だがR418丸山ダム区間にも負けないスパルタンぶりだ。
 ここはちょうど天竜川の岸が半島状に突き出たようになっている所(地図D地点)で、この先の道の様子を確認することが可能だ。(マウスオーバーで表示します)
 画像の中間部、樹木の色が変わっている所を県道は通っているが、中央部に滝があるのはご覧頂けるであろうか、画像では少々小さいが肉眼ではもっとはっきり見え、音も聞き取ることができた。
 
 既に徒歩に切り替えてから一時間近く経過し、少々疲れてきたが何とかあの地点までは辿りつきたい。
 境橋から15分後、再び橋が現れる。ここも苔むしているが、竣工当時の姿をよく留めているように思える。
 跨ぐ谷は結構深そうで、もし橋が落ちれば修復されるかは微妙そうで、一気に踏破難易度が高まることは間違いない。
 先には崩落が見えているがこの程度の場所は頻繁に現れ、あまり撮影する気にもなれないほどで、いつ決定的な場面が現れてもおかしくない。
 
 紅芋橋? まさか…。紅葉橋か。いずれにしても山奥の辺鄙な道には似合わない名前だと思うが、どんな由来あるのだろう。
 

 余談ではあるが、この辺りでかなり先のほうから野犬?(しかも複数)の鳴き声が盛んに聞こえてきた。猿ならまだ分かるがこんな山奥で犬かよ…。と思ったが実際遭遇すればかなり危険なことは間違いなく、かといって引き返す気には到底なれないのでその辺の棒きれを拾って、不安な気持ちでしばらく歩いたが、ますます近づいてくる(こちらから接近している?)ようでもうダメかとも一時思ったりもしたが、いつの間にかどこかへいってしまったようで鳴き声も聞こえなくなった。

 E〜F地点

 画面右側に見える青テープは、約1時間前に自転車を置き徒歩に切り替えた地点からずっと100mおき位の間隔で木の枝等に結び付けられていた。
 
分岐が多いわけでもガレた登山道でもないこの道で目印が必要とも思えないが(そのくせ唯一ルート案内が役立ちそうな先ほどの崩落地点内にはなかったのだが)、律儀にこの先も続いていた。
 
 それよりも行く手に見える標識は…
 
 もう一度確認するがこれは、振り返って夏焼方面から撮影した画像である。
 通常で考えれば進行方向に背を向けて通行止の標識が現れたとなれば、この先廃道区間も終わってしまうのではないかと思うところだが、前回の探索からもこの先の更なる廃道化は確定している。
 
 考えられることとしては、これが立てられた時点では、夏焼側の廃道化も進んでおらず、先ほどの杉の若木が植林された崩落地点だけがあったということか。

 しかしネット上の記録を見ると90年代半ばには既に夏焼側の荒廃も進んでいたようなのでこの結構新しそうな標識がそれより前からあったとも思えず、謎である。

 路上に転がる古レール発見。
 妙に短くカットされているが、飯田線旧線由来のものなのであろうか。
 線路切り替えの際、撤去されたレールの輸送にこの県道が使われたというのはありそうな話ではあるがそれからずっと路上に転がり続けているというのも妙だ。
 謎の通行止から約5分、再び橋に差し掛かる。
 残念ながら名前は不明である。
 山側は結構な滝になっているが、先程見えた滝程のスケールではなく違うようだ。 

 G地点

 ここは山肌を流れる沢が路上を横断している。今のところはそれほどの障害にもなってないが、年月が経てばさらに荒廃を増すこと間違い無いだろう。
 

既にダム脇のゲートを越えてから2時間以上、徒歩に切り替えてからでも1時間以上が経過している。復路のことを考えると体力的にも時間的にも厳しくなってくるが、夏焼側の大崩落はもうそう遠くはないはずで、先ほど見えた滝は目の前のはずだ。
 予想どおり10分も経たないうちに、轟音と共にそれは現れた。
 下にはちゃんと橋が掛っていて間近で観察できそうだ。

   すごい
        滝

 


 滝の正面を横断する橋は多数の落石に遭い、荒れてはいるがしっかりとしていて渡るのには問題無い。
 今にも落下しそうな親柱には昭和34年11月竣工と彫られいるが、それ以外の親柱は行方不明で残念ながら橋の名称は不明である。

 それにしてもこの滝、今日が雨の翌日で水量が多いことを抜きにしても、ちょっとした名所になってもおかしくないレベルだと思う。しかしこの辺りには滝好きには名の知れた名瀑も多いようで相手にもされないのか、少しネットで調べた程度では情報を得ることはできなかった。

 しかしこの場所、県道に面しているとはいえ普通に車を利用して訪れるとしたらダム脇のゲートから延々3時間以上歩かないと辿りつけないと思われそう気軽に来れる場所でもない


 晴天のためか、滝壺に見事な虹が掛っていた。
 廃道に掛る虹…。
 ロマンチックではないか。
 

 抜けられる見込みは薄いが、大崩落地点は近いはずだ。



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