「T秘境」と急駟滝(後編)

千葉県「某所」にあるとされる通称T秘境、場所だが、その詳しい位置をネットで公開することは最近までタブーとされてきた。
 しかしながら現在ではひとたび検索を掛ければ、かなり詳しい情報が得られるようになっているようだ。
実際この場所は本来なら余所者が入り込むことはないような集落の中の細い道のどんづまりのような所にあり、すんなりと目的地に  たどり着けずウロウロするのは住民に迷惑をかけることになるのは間違いない所。
 例によって地図の掲載はないが、このページを見て実際に行ってみたいと思った方がいたならば、どうか多角的に情報を集め、万全を期してから訪問してほしい。
 ちなみに「秘境」とはいっても、この場所は明治時代の川廻しによる牧場造成によって造られた人工景観なのだが、実際行って見ればそれを忘れさせる魅力的な所である。

 また、房総の川廻しについてはとても解りやすく解説したサイトがいくつもあるので興味のある方は検索してみてほしい。

 急駟滝

 さて…。

 クモの巣トラップの連続する支流をなんとか戻り、急駟滝の下へ。

 前述の通り非常に水量は少ないが、岩肌は乾いているという訳ではなく、見るからに滑りそうである。

 前回も出たが、これは2008年3月の様子。

 実のところ、この時も上まで登ろうと企てたのだが苔むした岩肌のヌルヌルと積もった落ち葉に阻まれ、途中で断念した経緯がある。
 しかしながら、今日は時期がらか水量も少なく落ち葉も無いので条件としては格段に楽そうである。

 それならば、ロープに頼らず…。なんてことは出来る訳もなく正面右に垂らされた数本のロープの助けを借り登り始める。
 急駟滝は大きく分けて3段の構成になっているが、最初の一段目は大した勾配ではなく難なく登れる。

 ここまでは2008年時も登れた。

 そして難関の2段目を越えると滝上部の隧道がいよいよ姿を見せ始める。

 隧道へ 

 隧道まであと一歩だが、この辺りが最も勾配のきつい所。

 しかしながら、今日は足元も殆ど乾いており新し目のロープも頼もしい。 
 登り始めから5分足らずでついに滝上部へ。
  
 ここが人工の滝であることの証明といえるこの高さ5m程の隧道だが、房総半島の素掘り隧道にありがちな過大なサイズである。

 元々はもっと路面が高かった可能性もあるだろうが、この僅かな水量とはいかにも不釣り合いだ。
 落差約30mは伊達ではなく、上から眺めれば結構な高度感がある。

 水流によって削られ、滝が後退した様子が見て取れるが、明治期に出来たというこの滝、かつてはもっと豊かな水量に恵まれていたのであろう。
 隧道は30m程でこの先は高宕川の本流方面となる。

 こちら側の出口は高さ3m程か。

 相変わらず水量は少なく、普通の素掘隧道のようにも見える。
    上流側の出口はというと、内部からは小さく見えたが中間地点から先は外に向かってだんだん広がっていく不思議な形状になっており、一番広い所はやはり高さ5mはありそうだ。

 上部の土被りは少なく、普通なら切り通しになってもおかしくない状況だが、あえて隧道を掘ったのは房総半島らしい所。

 高宕川

 この先は川廻し以前からの高宕川本流へとつながっているのだが、相変わらず水量は少ない。

 地図を見てもどこかへ抜けられるというわけではないようだが、とりあえず少し進んで見る。
 滝から100m程先には、コンクリート基礎とマンホールがあり、水源関係のものか。

 高宕川は元来隧道の手前で北東方面へ大きく蛇行し、黒滝への支流の先にある宮内滝(未踏)へつながっているようだ。
 また画面右側の岸上には川廻しの目的である牧場跡が存在するとのこと。
    戻ります。

 沢の経験者であれば、このくらいの滝は特に印象にも残らない程度のレベルらしいが、自分のような素人には充分怖い冒険である。
 滝を慎重に下り、自転車を置いた場所へ戻る。

 画像は黒滝下の甌穴。

 岩の隙間に入り込んだ小石が回転できて形成されるという甌穴だが、今日のような緩い流れでは生育するとは思えず、かつての急流ぶりが偲ばれる。

 下流側

 急駟滝方面と比べてあまり注目されないが、スタート地点からすぐ下流にも隧道が存在する。

 これも当然ながら川廻しに由来するものである。
   下流方面より。

 場所がらにいかにも山ヒルの被害に会いそうなT秘境であるが、そのような話は聞かず真夏のこの日も一切遭遇することはなかった。

 ちなみにさらに下流にももう一つ川廻しの隧道がある。
 
 コマが余ったのでこの日撮影した写真の中からいくつか…。

  この頃は晴天の真夏日が続き、高宕川と同様にこの片倉ダムも大変に水位が低く、この支流などは殆ど干上がっていた。

 藻が乾燥してこうなったのだと思うがドラクエの「毒の沼地」の如き状態に。

 しかしこちらは踏みこめば一歩ごとにHP−2程度では済みそうになく、精神ダメージも酷そうだが。

 こちらは鴨川有料道路の料金所。

 近くの房総スカイラインは有人の料金所があり、自転車も30円の料金を支払うのだが、こちらは無人で「賽銭箱」モードとなっている。

 しかしながら、やけに大きな投入口、右下のスピーカー(無銭通行者に警告…わけないか)、ガムテープで隠されたスイッチ等不思議な感じである。