国道421号石榑峠旧道2011夏(後編) 




国道421号は三重県桑名市を起点として、滋賀県東近江市へと至る全長約70kmの国道だが、県境部分の石
榑峠(いしぐれ)付近は幅2m制限という挟路の上に急勾配が続き、いわゆる「酷道」として名高い。また峠の手前に置かれた大型車の侵入を強制的に制限する対になったコンクリートの「門」は有名であったが、2011年3月念願のトンネル開通を果たし難所は解消されている。

 滋賀県側旧道は現状峠まで到達できるようであるが、一時期は廃道化確実と見られた三重県側の状況はどうなっているのであろうか。

  参考 2009年秋 旧道レポート 石榑トンネル開通レポート

 ゲート

 ガッチリと閉まったゲートを麓側から。

 この先工事中と補足が付けられているが、現状工事が行われている様子が無いのは見てきた通りである。
 ゲートから先は、完全一車線の未整備の道になる。

 この橋は鵜峠橋、昭和29年竣工の古豪である。
 5分と行かない内に一気に視界が開け、現道との合流地点が見えてくる。

 左に見えているのは石榑トンネルのポータル裏である。
 正面からでは解らなかったが、この三重側坑口付近は土被りがなく、山から突き出したような造りになっている。

 

 石榑トンネルを正面から。

 旧道側の看板には、通行止 白竜神社までは通行できます。と書かれている。

 3月の開通日にはあれ程賑わったトンネルも、今は通る車も殆ど無く…。 と思いきや実際にはこの時間でもそれなりの交通量があり、トンネル開通前と比べれば格段に県境を越える車は増えているのであろう。
 2009年11月の同一地点

 現在の旧道入口は元からのものでは無く、本来もっと手前から分岐し現道と交差するようなルートであった旧道はトンネル工事と干渉するため、この時点では工事中の現r421を跨ぐように仮桟橋が架けられていた。

 真の旧道入口

 となれば、当然気になるのはかつての旧道入口から先の現状。

 実は3月のトンネル開通時に入口の様子だけは確認しているだが、その先の状況は不明である。

 

 スプリンクラーの完備された雪国仕様の現道を10分程歩くとこの地点。

 旧道分岐には車止めが設置されているが、とりあえず立ち入り禁止等ではないようだ。

 入口からほんの50m程だけは、現道工事のおまけといった感じで舗装し直されているが、すぐに旧来のままの状態に戻る。

 この辺りの狭さと急勾配ぶりは、あの峠手前の最狭区間と同等のレベルである。
  
 上のコマの2009年秋の様子。

 
意図せずほぼ同じアングルの写真が撮れたが、もっとも大きな変化として国道のキロポストが消えている。

 前述の通り、峠区間の旧道も未だ国道指定されたままのようで「おにぎり」等も現存しているが、さすがにこの場所は国道指定を外れているようだ。

 結末 

 緩やかな勾配でトンネルを目指す現道に対して、旧道は急激に現道との高低差を広げて行く。

 この道の明るくない未来は容易に想像できるが、未だ道は続いている。

 砂山方面へと続く遊歩道への入り口。

 そう、これがかつての旧道入口がいまも維持されている理由であったようだ。

 ここから自転車のあるキャンプ場へと繋がるルートもあるようだが、当然先を目指す。
 もはや存在の大義名分を失ったかつての旧道であるが、道は続いている。

 先に見える橋は水晶橋、昭和28年竣工。

 先ほどみた鵜峠橋と同じ造りの重厚な親柱と欄干が印象的だが、こちらの方が数段新しく見えるのが不思議である。
 終了

 
先ほどの遊歩道入口から50m程で旧道は現道の法面補強に飲み込まれ消えていた。

 予想通りの結末ではあるが、あっけない終わり方ではある。


 
 ちなみに2009年秋の状況はこのようであった。

 トンネル工事中の段階では、前コマの地点から現道を跨ぐように仮桟橋が掛けられて先ほどのトンネル脇の地点に通じていた。

 元々はこのまま法面沿いを直進して、抗口前辺りでカーブするようなルートだったのであろう。
 

 …の前にちょっとだけ先を。

 ちょっと前に別れたばかりの現道だが、こんなにも高低差が開いている。

 不自然な感じの側溝は旧道時代の無残りか。  

 しかし…


 ちょっと欲が出た。

 こんな場所にいる事の是非は別として、この擁壁は完全に旧道由来のものであろう。

 トンネル建設で大半を削られた旧道だが、完全に死んではいなかった。
 ここまで来れば後戻りする気にもなれない。

 通行止め地点から100m程で邪魔な落石防止ネットのワイヤーは無くなり、普通に歩けるようになるが既に石榑トンネル坑口は目の前だった。

 
 脱出成功

 石榑トンネル抗口上から現国道を眺める。

 もともとはこの場所を斜めに横切るように旧道が通っていた筈だが、路盤もろとも完全に消えている。
 コマが余ったので、最初にちょっと出てきた宇賀渓キャンプ場のスナックを…。

 隣の大衆食堂と共に異彩を放つスナックだが、車以外では到底来れないこの場所でサインやイルミネーション?が示す通り今日もしっかりと営業している。