滋賀県側 道路脇の看板より

  国道421号は三重県桑名市を起点として、滋賀県東近江市へと至る全長約70kmの国道だが、県境部分の石榑峠(いしぐれ)付近は幅2m制限という挟路の上に急勾配が続き、いわゆる「酷道」として名高い。また峠の手前に置かれた大型車の侵入を強制的に制限する対になったコンクリートの「門」は有名である。
 
 しかし2008年9月の豪雨による土砂崩れによって、三重県側の峠道は各所で寸断されその後も復旧されることなく現在に至っていたが、2011年3月26日 全長4158mを誇
る石榑トンネルを含む石榑峠道路が開通した。

その様子をレポートします。
(旧道レポートはこちら)

 出発


 今日、2011年3月26日は石榑トンネルを含む石榑峠道路の開通日である。

 前回と同じく三岐鉄道三里駅をスタート地点にしたが、15時の開通まではあと一時間以上あり充分に間に合う筈だ。

 写真の青看は東近江までの距離が貼り替えられた様子が窺えるが2009年当時と変わっておらず、トンネル経由の距離かは不明である。

 
 国道306号との交差点を過ぎると、かつては幾つもあった「石榑峠通行不能」の看板はすべて「通行注意 国道421号滋賀県側幅員狭小のため大型車すれ違い困難」という内容のものに変えられている。

 この時点でも峠方面へ向かう車は結構おり、トンネル前は長蛇の列になっていることが予想された。
 宇賀渓のキャンプ場入口を過ぎると、峠へ向かう車も詰まり気味になり、車列の最後方が近いことを予感させる。

 この辺りから最近敷き直された感じのアスファルトに変わり、改良区間にはいっているようだ。

 14時40分
 程なくして車列の最後尾に到達。

 警備員が車一台一台に何番目かを伝えているようで、126番という声が聞こえた。

 車列 

 しかし自転車はスルー。

 特に止められる事も無かったので、前方へと進む。

 左へ分岐する旧道側の舗装も新しくなっているが、固定式のバリケードが設けられている。
 自転車の特権(笑)であっという間に先頭へ。

 警備員にここから先はダメと念を押されたが、無論そんな気は無い。

 先頭の車はなんと午前6時位から並んでいたとか。


 ちなみに今日の10時に予定されていた開通式典は中止になったようだ。
 15時まで10分を切るとパトカーが先頭に立ち、いよいよ開通ムードが高まる。

 この後もバイクが何台か横入りしようとしていたが、全て追い返され最後尾に戻るよう指示されていた。

 警備員の話す内容によると、車列は200台を優に超え危険な状態になったため、後方は2列にして詰めているとのこと。、
 特にアナウンスなどは無く、15時ちょうどに静かにパトカー先頭にした車列は動き出した。

 パトカーのスピードはゆっくりで、トンネル一番乗りも不可能ではない感じだったが前述の通り早くから並んでいる人ばかりであり、さすがに遠慮した。

 脇の道は旧道へと通じていると思われ、そこで見送るのは旧道復旧工事の関係者たちか。  
 何枚か写真を撮った事もあり、トンネルに入ったのは10番目くらいか。

 ちょっと前に流行ったようなレリーフなどは無くシンプルな抗口である。

 しかし縦型の銘盤は非常に詳しい内容である
 見たい人はここをクリック。

 トンネルへ

 自転車にとって長大道路トンネルというのは、例外なく排ガスと騒音にまみれた非常に快適で無い空間なのだが、それがまったくない入った瞬間の爽やかなトンネル内の空気が非常に印象的だった。

 トンネル内に一応歩道はあるが申し訳程度であり、最近のトンネルにありがちな過剰な広さは無い。
 トンネル自体の広さはそこそこだが、退避抗?は左右に数ヶ所づつ設けられており、大型トラックが楽に入れそうな巨大なものだ。
 長大トンネルには付き物の大きな通風装置。

 廃ガスで真っ黒に汚れるのが仕事の装置ではあるが、今はまだピカピカだ。
 
 また当然ながら壁面も路面も汚れ一つなく、通常のトンネルのイメージとは余りにも違う。     
 (帰りに撮影)
 トンネルは滋賀県側へ向けて登りの方勾配でなかなかスピードが出ず、車列も詰まりがちであるが、約20分かかってようやく出口が見えてくる。

 下り一方の滋賀県側からの車列はやはり順調なようで、きわめてスムースに流れていた。
 外は雪?

 「滋賀県側 凍結注意」のサインもあったがちょっと予想外である。

 ちなみに反対車線側の高くなった歩道の方が柵もあって安全そうにも見えるが、退避抗の部分では階段を下りなければならず、同じ幅に柵が設けられた分狭くなっており、壁面の出っ張りも多いのでかえって危ないことは間違いない。
  

 25分かかって滋賀県側へ

 石榑トンネル 滋賀県側抗口。

 三重県側と同じデザインで、銘盤も同じものが取り付けられている。

 しかいこういった所には必ずある「滋賀県」のプレートが見当たらない。

 そういえば三重県側にも無かったか。

 滋賀県側

 トンネルから先の国道も石槫峠道路として整備されているが、基本的には旧道のルートを踏襲しているようだ。

 しかし橋梁部分など一部では別ルートになっているような所もある。
 祝トンネル開通
 三重県方面通行可能

 この自粛ムードのなかで初めて見た祝の文字。

 本来であれば、一般車の開通セレモニー等も予定されていたのかもしれない。
 広々とした2車線の道を下ると、やがて現在も工事中の区間に入る。

 先ほど見た大型車すれ違い困難というのはこの先のことで、国道421号の整備はまだ終わっていない。

 冬季閉鎖の看板は撤去し忘れか。
 ちなみに三重県側の路面には現在はスプリンクラーも装備され、通年通行可能な雪国仕様である。
 現状での工事の最終地点に取り残されたような「古おにぎり」

 さて、このまま八日市方面へ進むのがトンネル利用者としては正道なのであろうが、時間も時間なので少々後ろめたい気もするがここはUターン。

 ちなみに車でも同じ事を考える人は多数いるようで、帰りのトンネル内の三重方面車線は三重ナンバーが多数を占めていた。

 せっかくなので旧道方面も見ておく。

 トンネル脇から分岐する旧道だが、入口付近には特に通行止めの表示も無い。
 まあここ自体が冬季閉鎖区間の中だったからではあろうが。

 国道421のシールが貼られているが今日をもって旧道に格下げの筈である。

 しかしこういうシールは剥がれにくいようであり、今後もこのままになりそうだ。
 なぜか奥へと轍が続く旧道だが、ここで通行止。

 …しかし良く見ると小さく「県境以遠」とあり冬季閉鎖の前は滋賀県側は峠まで到達できたようである。

 先ほど見た通り三重県側の旧道も工事が行われているようで、いつかは全線通れるようになるのであろう。
  
 2011年夏 旧道探索しました