国道421号石榑峠旧道2011夏(前編) 




国道421号は三重県桑名市を起点として、滋賀県東近江市へと至る全長約70kmの国道だが、県境部分の石
榑峠(いしぐれ)付近は幅2m制限という挟路の上に急勾配が続き、いわゆる「酷道」として名高い。また峠の手前に置かれた大型車の侵入を強制的に制限する対になったコンクリートの「門」は有名であったが、2011年3月念願のトンネル開通を果たし難所は解消されている。

 滋賀県側旧道は現状峠まで到達できるようであるが、一時期は廃道化確実と見られた三重県側の状況はどうなっているのであろうか。

  参考 2009年秋 旧道レポート 石榑トンネル開通レポート

 出発

 2011年6月15日

 今年3月に待望のトンネル開通を迎えた石榑峠であるが、2009年秋に訪れて以来、旧道の詳しい状況は不明である。

 しかし、どうやら現状峠まで普通に到達出来る滋賀県側に続いて、三重県側でも復旧工事が進んでいるという場情報もあり、その状況は否応なしに気になる所である。
 程なくして、宇賀渓キャンプ場の分岐に到達。

 このまま自転車で旧道を目指せば一番簡単なのは当然であるが、今日はあいにく平日であり復旧工事の進行具合も不明であるので、前述の通り一度竜ヶ岳に登ってから石槫峠に到達し、そこから旧道を進む予定である。

 
 売店や食堂はともかく、焼肉屋!やスナック!!もあるキャンプ場駐車場付近を過ぎ、林道を進む。

 この橋は水晶橋 昭和28年竣工とあり、石榑峠旧道の橋と同一の造りの重厚なものだ。

 国道から分岐して竜ヶ岳の麓へ続くこの林道であるが、道幅もそれなりに広く、橋の竣工年度が示す通り歴史のある道のようだ。

 

 沢沿いに進む林道は途中崩落地点もあるものの、おおむね状態は良く自転車であればほぼ乗車して進めそうな感じではあった。

 しかし、今日の予定は帰りに国道旧道を歩いて戻る予定であり、自転車をここまで連れてくる訳にはいかない。

 キャンプ場から2km弱で林道は終わり、裏道(ホタガ谷)登山道に入る。

 登山道

 「裏道」というのは北から裏道 中道 表道と呼ぶ鈴鹿の登山道のローカルルールによるものあり、この裏道が宇賀渓から竜ヶ岳へ至るメインルートとなっている。

 名前通り、沢沿いに進む登山道であるが比較的良く整備されており、迷うような所は少ない。

 しかし数年前には遭難者も出たらしく、慎重に行く。

 幾つかの滝を巻きながら高度を上げ2時間程歩くと、ようやく稜線が近づく。

 沢に殆ど水もなくなったこの辺りには炭焼きの窯の跡などもあり、古の人々の往来を感じさせた

 谷を登りつめると、笹原の中に灌木が点在する風景に変わり、ここからは県境稜線まで笹の切り開き道を登って行く。

 鈴鹿全体で見られる笹枯れの現象だが、ここでも例外ではなく、一見勢いよく生い茂るように見える笹も、良く見れば新芽は殆どついていない。
  
 やがて県境稜線に出ると、高低差はほとんど無くなり、前にお椀を伏せたような竜ヶ岳山頂部、後ろに階段状に削られた姿が痛々しい藤原岳を見て進む。

 この辺りの灌木はシロヤシオが多く、一斉に花をつける5月中旬頃には、「羊の群れ」と呼ばれる景観を造り出すという。

 竜ヶ岳 

 今まで現在時刻を書いていなかったが、実は登り始めたのが12時過ぎで、この標高1099mの山頂に着いたは15時になろうとした頃だった。

 秋ならば日没必死の危険な登山であるが、夏至前のこの時期は19時を過ぎてもまだ明るく、何とかなるはずだ。
 又この時間であれば旧道の工事もやっていない筈…。

 そんな訳で山頂には当然のように誰もいなかったが、この時期は北鈴鹿一帯にヤマビルが多いとされ登山者に敬遠されることもあるだろう。

 薄もやのかかった釈迦ヶ岳、御在所山を見ながら石榑峠を目指して標高を下げてゆく。

 この竜ヶ岳と石榑峠を結ぶ登山道が表道と呼ばれており、2時間ちょっとで国道から往復できる気軽なルートである。

 30分程で重ね岩に到達。幾つもの巨石が重なりあった奇景であるが、非常にグリップのよい石質でどうしても登りたくなる。
 無い

 重ね岩から見えたこの風景。

 石榑峠と九十九折れの続く滋賀県側旧国道の風景は前回と変わらないが、否応なしに目立っていたNTTのアンテナは、情報どおりきれいさっぱり無くなっていた。

 このアンテナの為に旧道が維持されるのだと思っていたが、違ったようだ。 
 重ね岩から先の登山道は少々急な所や、深く掘れた溝道もあり、危険というまではいかなくとも軽快に下るというわけにはいかない。

 
 山頂から一時間ちょっとで、無事石榑峠へ到達。

 滋賀県側からであれば普通に車で来ることが出来る場所であり、登山口周りが少し整備されている位で前回来た時と特に変化は無いが、このような時間でもあり辺りには一台の車も無い。
 三重県側へ50m程進めばこの場所。

 「絶対に通れません」の看板もそのままであるが、ひしゃげてしまっているのは雪の重みのためであろうか。

 相変わらずの立ち入り禁止であるが、この先の小峠と呼ばれる個所から再び登山道へ入るコースもあり徒歩ならば対象外の筈。
  

 旧道へ

 さて、既に時刻は16時を過ぎているが、今日はこれからが「本番」。

 しかし前述の通り今年3月の石榑トンネル開通の時点で旧道の復旧工事が行われている様子が窺え、さらにその前(2010年秋頃)から工事が進んでいるとの情報もあり、以前の状態のままとは思えないのが現実なのであるが。
 やっぱり

 この辺りは前回(2009年秋)時点は酷く荒れてた記憶があるが、キレイに治っているではないか。

 
 と、おもったのも束の間、100mも行かない内に道は以前と変わらない荒れた状態に戻ってしまう。

 先ほどの場所だけをピンポイントで治したとは思えないが…。
  
 見覚えのあるこの場所。

 謎のコンクリート建造物とその横に建つ木製電柱の背後にはNTTのアンテナが聳えていたはずだが、先ほど確認した通りきれいさっぱり消えている。

 (マウスオーバーで2009年秋の状態へ)
 
 30分程下ると、最狭区間の終わりを告げるコンクリート門が見えてくる。

 前のコマからここまでの間も何か所か補修された様子はあったが、ここは見事に以前のままであり、路肩の崩壊がさらに進んでいるようにすら感じる。

 この先はやや道幅も広くなるが、最大の被害を受けたのもこの先である。


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