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  国道303号 寒風トンネル旧道 (滋賀県) 


 国道303号は岐阜県岐阜市と福井県若狭町を結ぶ路線であるが、途中には岐阜⇔滋賀県境の八草峠区間、旧久瀬村から揖斐川町にかかる区間の樫原トンネル~新北山トンネル区間を始め、幾つもの旧道区間が存在する。

 今回は鯖街道とも呼ばれる滋賀⇔福井県境区間の寒風トンネル旧道を訪れた。

 旧道へ

 2011年8月30日

 国道303号の滋賀⇔福井県境に近い寒風(さむかぜ)トンネル

 1980年竣工 延長256m 魚のレリーフのある普通のトンネルで、付随する旧道もそれ程長い訳ではなさそうだが、全国でも稀な特徴を持つ旧道でもある。

 それは、すでにこの画像の中にあるのであるが。

「この道路は廃道
すので立ち入らない
で下さい。
     滋賀県


 なんと滋賀県による廃道宣言。

 このような例は他に見たこと記憶がなく、そもそも街中で廃道という単語を目にすることすら稀であろう。
 
 しかも「廃」の字が「疒」やまいだれになっているのがさらに目を引く。

 この字は「癈」を略したものと思われ、正確にには間違いのようだが、廃道の雰囲気はより出る字面である。
 いざ廃道へ

入口付近はシダ植物の藪に覆われていたが、50mも進むと枯れ草の積もったアスファルト路面となり、自転車で進むのに問題は無い。

 ここまで来れば国道からは目が届かないが、川の対岸の採石場では盛んに作業が行われており少々落ち着かない。
 枯れ枝の隙間から顔を覗かせるセンターライン。

 今から31年前まで確かにここは大型トラックが日夜行きかう幹線道路であった。
  入口から100m程進み、採石場の喧騒も聞こえなくなった頃、にわかに道は荒れ始める。

 路肩が削られ、ガードロープの支柱が露出しているが、地中に埋まっている部分はこんなに長いものなのか。

 また、そのガードロープの内側に樹木が繁茂していることも注目である。

 崩落

 さらに進むと、路肩というより道全体が落ちてしまっている。

 対岸までは50m程、土の斜面だが、枯れ枝が積もりそれ程グリップは悪くなさそうだが。
 
 少々迷ったが、自転車同伴でも何とか行けると判断し、斜面へ一歩踏み出す。

 予想通り枯れ枝の積もった路面はそれ程滑る事も無く、序盤はそれなりに安心して進めた。
 この辺りが中間地点。

 掴まり所の無い土の斜面はやはり緊張する。

 万が一の事を考え、なるべく斜面の上部を進むことを心がける。

 奥に見える白いものは河原まで垂れ下がったガードレールの残骸で、崩落規模の大きさを物語っている。
 約5分で崩落を攻略。

 ここからは再び夏草の侵略を受けるアスファルトの路面に戻る。

 寒風橋 

 崩落を振り返って。

 この画像では一切の人工物が確認できず、前後の区間の「美しい」昭和廃道とは対照的だ。
 再びアスファルトの路面を行く。

 薄くはないと思われるアスファルトの隙間に根を張る雑草の生命力には驚かされる。

 
 曲線を描くセンターラインが美しい。

 ここも良く見ればガードロープの内側に樹木が街路樹のような顔をして立っており、過ぎた時間の長さを実感する。
 すぐ先に寒風橋。

 歩道どころか路肩スペースも殆ど無い古い造りの橋だが、名前以外の銘盤は失われており、竣工年度は不明。
 中央部分から来た方向を振りかえる。

 この辺りは藪も無く、30年の放置を経ても往年の雰囲気をそのまま残す。

 これぞ昭和廃道…か。
 こちらが進行方向。

 黄色いブロックは車止めで、ここが通行止地点であった時代もあるようだ。

 橋の先、左方向へ進む林道?は既に廃道化…。とはいってもこの旧国道とはレベルの違う踏みこむ気にもなれないほどの。

 ちなみに左の看板は採石場の発破時刻を示すもの。

 右の看板はというと…。

 そして

 側にあったものと同じ内容だが、足元が完全に空洞化しており、ギリギリ踏みとどまっている親柱共々、このようにして立っていられるのも長くは無いのかもしれない。
  
 またこちら側の看板には人為的なものと思われるいくつかの凹みがある。 

 さらに…。
 いや…。いかに廃道マニアでも。

 現状車が入れないであろうこの場所でどうやって…。  

  まさか橋の真ん中で?想像すると恐ろしいものがあるが。
 別角度から寒風橋。

 31年の月日を経て今だ鮮やかな赤と蔦の緑のコントラストが美しい。

 奥に見える採石場は今日も稼働している。
 今日もギリギリ踏みとどまる親柱を決死?の撮影。

 平仮名で「さむかぜはし」と。

 実のことをいうと、この時まで「かんぷうトンネル」
「かんぷう橋」と思っていたのは内緒である(笑)
    廃道には付き物の廃車であるが、これは朽ち果てたというよりも部品をはぎ取られた感じで雰囲気が良くない。

 まもなく合流すると思われる国道との近さ故か。

 奥のブロックとガードレールはバリケードの残骸と思われ、ここまで車が入れた時代もあったようだ。
   廃車のすぐ先が現国道との合流地点。

 こちら側は藪もなくあっさりとした出会いである。

 やはりガードレール製のバリケードが設置されており、現状先ほどの看板まで車で入ることは不可能だ。

 左に見えるのは現寒風橋か。
   

 現寒風橋と寒風トンネルを振り返って。

 このまま手前方向に進めば、既に県境は近い。

 開通から31年が経過した今日、車列は軽快に通り過ぎてゆくが、残された旧道は短いながらも濃厚なものであった。